なぜ、「歩数計」という言葉は“死語”になったのか
情報通信技術(ICT)の浸透により、さまざまな産業分野にかつてない大きな変化がもたらされつつある。
金融業界には「フィンテック(金融とテクノロジーの融合)」が生まれ、自動車業界ではエンジンのない自動車や自動運転が当たり前になろうとしている。医療・健康産業も例外ではなく、むしろ最も大きな変化の舞台となる可能性が高まっているのだ。
ほんの8年前に設立された米国のベンチャー企業、Fitbit社が生み出した活動量計(フィットネストラッカー)「Fitbit」は、今では米国における同分野で80%以上のシェアを握り、2013年に450万台だった販売台数は2014年には1090万台、2015年に至っては第1四半期だけで390万台を数えている。
同社に続く活動量計メーカーも増え、2015年には全世界で同分野の製品販売台数が5000万台を超えたとの推計もあるほどだ。これらの多くがスマートフォンなどの通信機器と常時つながり、生活者の心拍数や運動量に関するデータがインターネット上を飛び交っている。
その陰で、「歩数計」という言葉は“死語”となり、その“シェア”は無力化された。たった数年でゲームのルールが変わり、製品ジャンルごと“死語”にされる時代の到来である。
医療・健康産業を考えるとき、その範囲の広さから、視点を整理することが必要になる。