もし、電力会社がタダで新品の電気温水器と太陽光発電システムを0.41米ドル/W(約50円/W)で提供しますよ、とプロモーションをかけてきたら乗らない手はないだろう。

 ミネソタ州の農村部にある電力会社、Steele-Waseca Cooperative Electric(SWCE)社は、こんなユニークなプログラムを展開している。同社は、小さな協同組合のメンバーが経営する地域主体の電力会社だ。「このコミュニティーソーラーを始めた理由は、メンバーが長年、低価格で再生可能エネルギーに投資できるオプションを求めていたからです」と、SWCE社で分散型システムエンジニアを務めるKristi Robison氏は語った。

 「コミュニティーソーラー」は、太陽光発電システムを設置できない電力消費者でも、太陽光発電事業の恩恵が受けられるシステムである。例えば、アパート住まいの人や、持ち家があっても日照条件が良くなかったり、太陽光発電システムを設置する十分な資金がなかったりする場合である。

 「コミュニティーソーラー」では、自宅の屋根や敷地内ではなく、地域(コミュニティー)内に太陽光発電システムを設置し、そこで発電した電力の一部を長期契約で購入する。発電量は、毎月の電力消費量から差し引かれ、電力消費者は差額を支払うだけでよい。太陽光発電システムを自分の家に設置せずに、さらにシステムの修理やメインテナンスに煩わされずに、「自産自消」をバーチャルに実現できる。

 この仕組みの利点は、コミュニティー内の広く、比較的安く、日照条件のより良い土地を利用できることである。さらにシステムサイズが大きいので、規模の経済性効果が高く、住宅用の屋根置きと比べると、コストも一段と低い。

 もう1つ重要な利点は、設置ロケーションが選択できるため、太陽光発電の発電量と供給量のバランシングが容易なことだ。SWCE社が電力を供給する地域の電力ピーク需要は夕方の5時~7時に発生する。一方、太陽光発電システムの発電量は、正午~午後2時にかけてピークを迎える(図1)。分散型太陽光発電システムを一般家庭の多い配電網に接続すると、太陽光発電の供給量が需要を超え、バックフィード(逆流)の可能性を高め、電力の安定供給を妨げかねない。

図1●太陽光発電(青線)を電力需要(赤線)比較:上:住宅付近の変電所(住宅用の需要と太陽光発電のミスマッチ)、下:工場付近の変電所(工場と太陽光発電のマッチ)(出所:Steele-Waseca Cooperative Electric)</p>
図1●太陽光発電(青線)を電力需要(赤線)比較:上:住宅付近の変電所(住宅用の需要と太陽光発電のミスマッチ)、下:工場付近の変電所(工場と太陽光発電のマッチ)(出所:Steele-Waseca Cooperative Electric)

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