固定費回収が引き起こす「デス・スパイラル」

 これら二つの料金制度はどのように今後の太陽光発電導入に影響するのか?

 この論点をカリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置く米ローレンスバークレー国立研究所(LBNL:Lawrence Berkeley National Laboratory)が定量分析で検証した。その結果は昨年、「ネットメータリングと市場フィードバックのループ:電気料金制度改正が与える分散型太陽光発電導入への影響の検討(Net Metering and Market Feedback Loops:Exploring the Impact of Retail Rate Design on Distributed PV Deployment)」と題したレポートに発表された。

 このレポートの題名の一部になっている「ループ(Loops)」とは、「無限ループ」と同じように「何度も繰り返される」という意味である。このレポートで取り上げられている二つの電気料金制度の改正は、実にループを引き起こすのである。

 自産自消を促進するネットメータリング制度により分散型太陽光発電システムの導入が増える。太陽光の増加につれ、電力会社の電力販売総量はさらに下がる。電気料金の一部である送配電網を維持する固定費を回収する顧客ベースが小さくなるので、電力会社は電気料金の値上げに踏み切る。値上げにより、太陽光発電システムを所有していない電力需要家は、電気料金削減のために太陽光の導入に走る。それにより、さらに顧客ベースが小さくなり、電力会社はまた値上げする、というループになる(図1)。

図1●電力会社に引き起こる「デス・スパイラル」(出所:Junko Movellan作成)
図1●電力会社に引き起こる「デス・スパイラル」(出所:Junko Movellan作成)
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 こうしたループを、米国では電力会社の「デス・スパイラル」と呼んでいる。値上げに伴い、太陽光発電の導入が加速し、「グリッド放棄」、つまり「電力会社離れ」が広がるのである。そうなると重要な社会インフラである送配電網を維持できなくなる。