「中国製」に限定せず

 現在、世界の平均的なパネル価格は、サニバ社が提案している1年目の最低価格よりも低いことから、米国国内でのパネル価格が上がり、米国太陽光発電産業の需要にネガティブな影響を与えるとみられている。

 2012年に中国製太陽電池セルを対象にした課税が行われたが、ベトナムやマレーシアなど他の国に製造を移すことで、関税を逃れてきた。したがって、今回は「中国製」に特定せず、米国以外で製造された「全て」の結晶シリコン型太陽電池セル・パネルを対象にした措置を要求しているのである。

 ちなみにサニバ社は1974年設定「通商法」の第201条および第202条に基づいてITCに措置を申し立てた。第201条に設定されたセーフガード措置以下、ITCが、国内産業への重大な損害又はそのおそれの存在について肯定的決定を行った場合、とるべき措置についての勧告も作成し、120日以内に、調査結果と救済措置を大統領に報告する。大統領は、関税の賦課、引き上げなどの措置を取ることを決定し、積極的な調整と輸入救済措置を適用できる。つまり、保護主義者と呼ばれるトランプ大統領が自ら米国太陽光発電産業の貿易保護策に関与するかもしれないのだ。

 米国太陽電池製造業を守るため、サニバ社は動いたが、「皮肉なことに、サニバ社は競争力を高めるため、2015年に中国の順風光電国際有限公司(Shunfeng Photovoltaic International)に大多数の株を売り、順風光電国際有限公司は、(米国での)関税を避けるためにサニバ社の株式の大多数を買い占め、米国市場へ生産拠点網を広げた」と、ミンツ氏は語った。

 サニバ社が提案している関税は国内生産者を保護するものだが、実際に現在、米国で結晶シリコンを使用した太陽電池セル・パネルを製造するはサニバ社とドイツに親会社を持つソーラーワールド社のみ。さらに、ソーラーワールド社は5月にドイツで破産申請したばかりで、米国における製造業の雲行きも危ないと言っても過言でないであろう。