グリッド安定化に貢献する電池を優先

 今回は、「Investment Tax Credit(ITC)」と呼ばれる連邦政府からの「再生可能エネルギー導入投資税控除(システム設置にかかった投資額の30%を税額控除)」を利用する場合、大型蓄電池用に限り、補助金額が0.04ドル/Wh低く設定されている。

 さらに、前回は少数のメーカーまたは施工会社などによって、プログラム開始と同時に補助金予算枠が押さえられてしまったので、今回は、もし1日で応募が予算を超えた場合、「抽選」制度が使用される。温室効果ガス排出の削減量、またはグリッド(系統網)への利点が多いプロジェクトは優先権が得られる。

停電時や災害用は補助金対象外

 今回のプログラムは、ピークシフト、ピークカット、効率と送配電網の信頼度の改善、グリッドコスト削減、アンシラリーサービスの提供と、分散型発電の信頼性の確立などが新たなゴール(目的)として加わった。

 そのゴールに合わない用途、例えば、停電時や災害時バックアップ用の蓄電池には補助金が出ない。ゴールに沿った利用を促すため、年間の最低放電回数が設定されており、日々のグリッドの平滑化に貢献するように誘導している。また、放電時間が長く、電池容量が大きくなると補助金額が下がっていくように設定されている。

 つまり、小型の蓄電池を短時間、頻繁に放電するほど、導入費用のうち補助金で賄える割合が大きくなる。再エネによる短周期の出力変動を吸収するアンシラリーサービスに合った使用方法を優遇し、そうした系統安定化に貢献する小型蓄電池の設置数を増やしたいという政策的な意図が推察できる。日本のように機器費や付帯設備費、工事費の合計額では、単純に補助金額が決まらない。

 大型、非住宅用の蓄電池は年間最低130回フル放電、住宅用は52回と定められている。ちなみに、この「フル」放電は必ずしむ一回に100%を放電ではなく、数回に分けて補助金申請時に記入された蓄電池容量を使用するという意味である。例えば、10kWhの住宅用の蓄電池の場合、年間520MWh (10 kWh x 52回)放電しなくてはならない(表3・4)。

表3●放電時間と補助金・掛け合わせ率
表3●放電時間と補助金・掛け合わせ率
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表4●電池容量と補助金・掛け合わせ率
表4●電池容量と補助金・掛け合わせ率
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