2018年のトライアルサービス開始に向けて、5Gセルラー規格の標準化や商用化に向けた動きが、この1年間に大きく進展した。5Gは段階的に標準規格が決められることに加え、用途に応じて特徴の異なる複数の仕様が計画されている。それゆえの分かりにくさもあり、混同や誤解も散見される。以下では、5Gの規格と周波数の動向、主な用途や市場見通し、対応するチップセット開発の動向を解説したい。

 5G規格には大きく3つの方向性があり、それぞれ標準化や商用化の時期が異なる(図1)。(1)eMBB(Enhanced Mobile Broadband)、(2)URLLC(Ultra Reliable Low Latency Communications)、(3)mMTC(Massive Machine Type Communications)である。LTE-Advanced(第4.5世代)規格以降、LTE-MTCやCellular V2Xなどこの方向性に沿った規格が盛り込まれるようになった。これら3つの規格はさらに、用途や商用化時期によって細かく分かれる。

図1●セルラー規格の方向性(出所:TSR)
図1●セルラー規格の方向性(出所:TSR)
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 (1)のeMBBはNSA(Non-Standalone) 5GとSA(Standalone) 5Gに分かれる。NSA 5Gは2017年12月に先行して標準化され、SA 5Gは2018年9月までに標準化される。

 NSA 5G(無線部は5G、コアネットワークはLTE)は既存のLTEネットワークを拡張する形で5Gを導入できることから、早期普及が見込まれる。一方、SA 5Gは無線部とコアネットワークとも5Gに準拠する。設備投資は大きくなるものの、投資の冗長性がなく、将来の5G規格に対応できる。5G通信事業者の大半はLTEインフラを生かしてまずはNSA 5Gを導入するが、中国China Mobile社と米Verizon Wireless社は当初からSA 5Gを導入する見込みである。

 (2)のURLLCと(3)のmMTCは、eMBBよりも後れて2019年末の3GPP Release 16で標準化される。商用化時期は2022年以降と予想される。

 URLLCは高信頼性や超低遅延を特徴とし、ロボット、自動車の遠隔操作、遠隔医療などの用途が想定されている。用途が特殊であるため、ビジネスモデルを含めて検討される必要がある。URLLCには自動車のV2X通信も含まれ、LTEベースのCellular V2X規格がベースになると考えられる。

 mMTCは、現行のNB-IoTやeMTC規格を拡張する形で実現される。ただし、現行のNB-IoTがmMTCの要件をある程度満たしていることから、標準化は急がれていない。