今回は、LPWA(Low Power Wide Area)通信モジュール市場を取り上げる。LPWA無線技術は長距離や低コスト、低消費電力を特徴とする無線規格の総称である。産業用途を中心に、ウエアラブル端末やホームオートメーション、白物家電などの一般消費者向けも含め、非常に幅広い分野での採用が期待されている。

 一方で、LPWAの通信モジュールコストや通信費には低価格が要求されており、モジュールメーカーや通信サービス事業者にとっては売り上げや利益を得にくい構造となっている。ビジネスモデルの確立は、LPWAに関わるプレーヤーにとって大きな課題だ。

LoRaやSIGFOX、NB-IoTなどが並存

 まず、LPWAの規格を整理しておこう。LPWAの規格にはセルラー(3GPP)規格とUnlicensed Band(主にサブ1GHz)を利用する規格があり、商用展開ではUnlicensed Bandが先行している。

 Unlicensed Bandを利用するLPWA規格はいくつもあるが、一定の規模を獲得しているのはLoRaとSIGFOXに限られる。一方、セルラーLPWA規格は2017年から商用化されている。現時点では地域やオペレーターによって採用規格が異なるものの、長期的には多くの地域でLTE Cat.MとNB-IoTが併用されるとみられる。主なLPWA規格の地域別採用動向を図1にまとめた。

図1●LPWAの地域別採用動向
図1●LPWAの地域別採用動向
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 Unlicensed Bandを利用するLPWA規格のうち、LoRaはCycleoを買収したSemtech社独自のベースバンド変調方式である。LoRaWANとして標準化されている部分は、MAC部分の通信プロトコルを指す。

 LoRa Allianceでは、LoRaWAN仕様策定やLoRaWANデバイスの認証などを行う。2016年には、基地局を利用したGeolocation機能に対応した。LoRaはプライベートネットワークとして利用される例が多いが、通信事業者にも採用されている。

 2017年初時点で34の通信事業者がLoRaを採用し、150以上の都市でネットワークが展開されている。多くの通信事業者はセルラーLPWAの補完技術としてLoRaを展開しようとしているが、SK Telecom社やOrange社、KPN社などは大規模なLoRaネットワークを構築した。Comcast社などの非携帯電話事業者にも採用されている。

 一方、SIGFOXはUNB(Ultra Narrow Band)通信プロトコルで、フランスSIGFOX社の独自規格である。SIGFOXはパートナーとなる通信事業者(SNO:SIGFOX Network Operator)に技術を無償でライセンスし、通信事業者が得る通信費収入を共有するモデルを採る。

 SIGFOXのすべての通信データは、フランスにあるSIGFOX社のサーバーに送られる。2017年第2四半期時点で、SIGFOX商用サービスは32カ国で展開されている。2016年初時点では16カ国だった。2017年中に40カ国以上、2018年には60カ国以上でサービスが展開される計画である。2017年初時点でフランス、スペイン、オランダなど12カ国で全国規模のネットワークが構築されている。