昨今の自動車業界では、EV(電気自動車)や自動運転、コネクテッド・カー(Connected Car)など、エレクトロニクス業界との関わりを強化する動きが目立つ。これに伴って、データ処理や通信の技術に長けた半導体メーカーがプレゼンスを高めている。具体的には、米Intel社や米Qualcomm社、米NVIDIA社などだ。これらの企業と技術提携する自動車メーカーも増えてきた。

 こうした動きは、自動車業界のサプライチェーンやそれを構成するTier 1、半導体メーカーの役割にどのように影響するのだろうか。そしてその影響は、自動車業界の未来をどのように変えるのか。

 完成車だけでなく、それを支えるインフラまでを含めて考えると、10年や20年といった時間軸で物事を考えていく必要がある。今回はこうした視点に立ち、Intel社、Qualcomm社、NVIDIA社という大手半導体メーカー3社が、自動車業界の将来に与える影響について分析してみたい。

Mobileye買収で本気度見せたIntel

 まず、Intel社の半導体売上高の推移を図1に示そう。全体としては2014年以降、緩やかに増加している。

図1●Intel社の半導体売上高の推移。グラフ上部の数字は車載向け売上高(出所:IHS Markit Technology)
図1●Intel社の半導体売上高の推移。グラフ上部の数字は車載向け売上高(出所:IHS Markit Technology)
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 各グラフの上部には、車載機器向けの売上高を数字で示した。2015年と2016年に大きく伸びてはいるものの、売上高全体に占める割合は1%にも遠く及ばない。それでも、Intel社の最近の動きからは、車載分野への本気度がかなり高いことがうかがわれる。

 2017年3月には、ADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)分野で先行する米Mobileye社を153億米ドル(約1.7兆円)で買収。自動運転開発用プラットフォーム「Intel GO」も自動車メーカー向けに提供しており、これを活用してドイツBMW社とは2021年までに自動運転の実現を目指すことなどを表明した。

 Intel社は携帯電話機やデジタル家電など、パソコン以外のさまざまな分野への参入を試みてきたが、いずれも成功には至っていない。高い成長が見込まれる車載分野では、何としても成功を収めたいというのが本音だろう。「完全自動運転を実現するためには、1日あたり4Tバイトのデータを処理できるコンピューティングパワーが必要。我々のソリューションが最も有効だ」。そんな主張を通じ、パソコンやサーバー機向けのコンピューティングパワーの優位性を、車載分野にも持ち込もうとしている。自動車メーカーにとって、同社が無視できない存在であることは確かだろう。