2015年9月7日、東芝が4カ月遅れで2015年3月期(2014年度)決算を発表した。同社のいわゆる「不適切会計」問題については、4カ月前の本欄でも簡単に触れた(関連記事1)。その後判明した事態は当時の想定よりもはるかに深刻で、会計処理方法の問題だけでなく、同社の倫理観や経営体制までもが問題視されることとなった。詳細については多くのメディアが報じているのでここでは経緯をおさらいするにとどめ、同社の決算内容にこそ注目したい。

 筆者が本件について最初に知ったのは2015年4月初旬だ。東芝が「例年通りのタイミングで通期決算を発表できない。インフラ関連事業に不適切な会計処理があり、この内容を明らかにしないと決算の数字が確定しない」との報道を耳にした。同社は同年4月3日に特別調査委員会を設置する旨を発表したが、この時点では取り立てて問題視されるような状況にはなかった。

 しかし5月8日になって、事態は想定以上に深刻であることが判明した。第三者委員会を設置することや、通期業績予想を取り消すことを同社が発表したことで、翌営業日には同社株はストップ安を記録する。

 ただしこの時点でも、我々の認識は今にして思えばまだ甘かった。同社が過去3年間の累計で営業利益を500億円以上減損する必要がありそうだと発表したこともあって、株式市場もあまり過剰な反応は示さなかった。その証拠に、4月上旬まで500円前後で推移していた同社の株価は400円を割り込むとすぐに買いが入り、400円台を維持する小康状態がしばらく続いたのである。筆者もこの時点までは、決算発表がいつになるのか気になる程度だった。