2017年5月12日に日立製作所が決算を発表し、15日に東芝が業績概要を公表したことで、国内大手電機メーカー8社の2016年度決算が出そろった。ただし東芝が発表した数字は監査法人が承認したものではなく、正確には「決算」と呼べるものではない。

 2016年度は全体に、円高の影響などから前期比で減益となった企業が多かった。一方、中長期の見通しでは各社の明暗がはっきりと分かれた。以下では、各社の決算を分析したい。

東芝はいまだ決算発表できず

 渦中の東芝は、冒頭で触れたように、監査法人の承認を得た正式な決算発表を行うことができていない。現時点でその予定日時も明らかにしていない。5月15日に同社が発表したのは、「2016年度通期業績の見通し」と称する独自の財務的な数値である。

会社公表資料よりIHS Technology作成
会社公表資料よりIHS Technology作成
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 それによれば、2016年度の売上高は4兆8700億円で、前年度比5.5%の減収となった。営業利益は2700億円と、同7530億円の大幅な改善である。ただし前年度の営業利益には7250億円の特別損失が含まれ、これを考慮すると同280億円の増益になる。

 当期利益は9500億円の赤字と、前年度における4600億円の赤字からさらに悪化。株主資本は5400億円の債務超過に陥った。

 部門別に見ると、ストレージ&デバイス部門の営業利益が2470億円と、全社営業利益の実に91%を叩き出した。そのほとんどがメモリ事業によるものである。

 このメモリ事業の売却を巡って、東芝とパートナーの米Western Digital社との間で主張が対立し、売却交渉は暗礁に乗り上げようとしている。最大の問題はこの間、NANDフラッシュメモリーを生産する四日市工場への設備投資が凍結されていること。NANDフラッシュメモリー市場のトップを走る韓国Samsung Electronics社が着々と設備投資を進めていることを考えると、その背中は遠のくばかりである。

 メモリ事業売却に向けた入札に際し、東芝が米Western Digital社への事前説明なしに候補企業にアプローチした、あるいは応札に当たってのWestern Digital社の見積り価格が低すぎた、といったことが対立の火種として報道されている。その事情がどうであれ、明らかなのはこの対立で両社が得をすることなど何一つないということだ。好調な需要を背景に各社が先を争って設備投資を急ぐ中、投資を凍結するなど本末転倒だろう。