半導体市場の前年比成長率が10%未満にとどまり、スマートフォンの出荷台数も同様に10%未満の成長にとどまる現在、業績を大きく伸ばしている半導体メーカーや機器メーカーは少ないという印象が持たれがちだ。だが実際は、自動運転や人工知能(AI)の市場を捉えた米NVIDIA社のように、業績を大きく伸ばしている企業も存在する。今回は筆者が注目している半導体メーカー/機器メーカー10社について、各社の業績や収益構造を比較してみたい。

 図1に、主要な半導体メーカーおよび機器メーカーの業績の前年度比成長率を示した。12月決算の企業が多いが、米Micron Technology社は8月決算、NVIDIA社は1月決算、米Apple社は9月決算であり、これらを踏まえて各社の直近年度の数字を比べている。

図1●直近年度における業績の前年度比成長率(各社決算資料よりIHS Technology作成)
図1●直近年度における業績の前年度比成長率(各社決算資料よりIHS Technology作成)
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 米Intel社、韓国Samsung Electronics社、米Texas Instruments(TI)社の3社はいずれも12月決算で、売上高の前年度比成長率は10%未満にとどまった。

 Intel社はパソコン市場の成長とともに売り上げを拡大してきたが、その成長が止まった今、産業機器向けなど、同社にとって新しい市場での成長が重要となっている。増収に伴い粗利も伸びているが、新市場開拓に伴う研究開発費や販売管理費の増加が営業利益を圧迫している。

 Samsung社はわずかな増収ながら、増益を達成した。スマートフォン「Galaxy」シリーズの伸び悩み、DRAM市場の低迷があったにも関わらず、減収をまぬがれたばかりか、増益を達成した点は高く評価できる。特に、NANDフラッシュメモリーの需要の急増にいち早く反応し、DRAMの生産ラインをNANDに切り替えた判断は速かった。

 TIは主力のアナログICの売り上げはほぼ横ばいだったが、その営業利益率は36%から40%へと向上している。Webを活用したマーケティング戦略や顧客アプローチ手法のマニュアル化など、徹底的な効率化が高収益につながっているようだ。