経営危機にある東芝に関する報道が連日、続いている。主力のメモリー事業を切り離さなければ資金調達が困難であることに加え、これほど重要な決断を金融機関の支援なしには下せない状況にある。メモリー事業を分離した後の東芝にどれほどの期待ができるかも未知数だ。かつてのシャープと同様、もはや自力では再生プランを描けない状況と言っていい。

 日本を代表する電機メーカーが相次ぎ経営危機に陥った今、改めて国内各社に問いかけたい質問がある。IoT(Internet of Things)で世の中が大きく変わろうとしている中、向こう10年間の事業戦略をどのように考えているかである。

 IoTによる社会の変革は“第4次産業革命”とも呼ばれ、IoTを用いた新しい機能やサービスが世界中で考案され実現に移されている。この流れを自社の変革に生かせるのか、あるいは後手に回って振り回されるか。10年後の世の中はどうなっており、その時に自社はどうあるべきか。IoTによる変革を味方につけられるような中長期の経営戦略を、ぜひ腰を据えて考えてほしい。

 自動車業界に目を移せば、メーカー各社はカーシェアリングというサービスが新車販売にどれだけ影響するか、という議論を避けて通れない状況を迎えつつある。自動車は多くの消費者にとって必需品だが、運転している時間よりも駐車場に眠らせている時間の方がはるかに長い製品でもある。大金を掛けて所有するよりもシェアすることで負担を軽くしようというのは自然な発想であり、IoTの普及が後押しする形で、カーシェアリングの動きは確実に広がっている。

 もしあなたが自動車メーカーの経営者なら、この動きをどう捉えて事業戦略に反映するだろうか。カーシェアリングの普及により、メーカーには何が求められるのか。カーシェアリングというサービスの提供者が出てくることは必然の流れであり、これに対して何の手も打たずにいることはメーカー側の大きなリスクになる。

 そもそもIoTは、今ある資源を有効に活用しよう、無駄を極力排除して効率化を目指そうという動きを促す手段だ。今まで当たり前に必要だったモノがその半分の量で足りる、あるいはこれまで必要だった作業を省けたり簡略化できたりする効果を狙うものと言ってよい。サービスを活用する側に大きな恩恵をもたらす半面、サービスやそれに付随するモノを提供する側にとっては市場機会が失われる側面もあるわけだ。

 「第4次産業革命とは大袈裟」。IoTについては、そんな声も耳にしないわけではない。だが、IoTがもたらす経済効果は今後、世界GDPの10%以上を占めるようになるとの試算もあり、筆者は第4次産業革命という言い方が大袈裟とは思わない。大袈裟に映るほどそのインパクトに真摯に向き合うか、大した影響はないと考えるか、その姿勢の違いこそが各社の命運を分けるのではないか。筆者はIoTに関して、日本の電機メーカー各社に次のような視点を持ってほしいと考えている。