みずほ証券では、日本やアジアを中心に多くのiPhone/iPadバリューチェーン企業(部品、部材、装置、組立、流通など)の動向を分析し、iPhone/iPadの生産動向の把握と見通しを行っている。今回は、2017年10月12日時点の生産数量予想を見直した(関連記事)。

 大きな変更はなく、ポイントはiPhone Xの生産がようやく立ち上がってきた点(2017年10~12月期数量予想は下方修正)、iPhone 8(4.7型)が保守的な従来予想をさらに下方修正した点、2018年第1四半期(1~3月期)に向けてiPhone Xの増産が続きそうな点、などである。

 バリューチェーンへの見方は、2018年1~3月期に第1四半期として過去最高の生産数量を見込むことなどから、全体ではポジティブである。一方で、旧正月あたりまでのiPhone Xの実需、販売動向を詳細に観察する必要があり、リスク要因にも留意したい。iPhone Xが失速する場合は、2018年第2四半期(4~6月期)の生産数量が第1四半期比で大幅に減少するリスクもあるだろう。第2四半期の予想生産数量に関しては、旧正月あたりまでの各新機種の販売動向を観察しつつ、改めて提示する予定である。以下は、機種別の生産動向に対する現在の見方である。

iPhone最終製品のアセンブリ数量に関するみずほ証券の推定/予想(単位は百万台、FYは3月期、実績はみずほ証券エクイティ調査部推計値、出所: みずほ証券エクイティ調査部作成)
iPhone最終製品のアセンブリ数量に関するみずほ証券の推定/予想(単位は百万台、FYは3月期、実績はみずほ証券エクイティ調査部推計値、出所: みずほ証券エクイティ調査部作成)
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 iPhone 8/8 Plusについては、従来予想通り販売が低迷しており、2017年11月後半以降の部品発注の下方修正、その後の生産調整を前提としている。ただし、iPhone 8とiPhone 8 Plusの価格差が100米ドルにとどまることもあってか、従来想定との比較ではiPhone 8が下振れ、iPhone 8 Plusが上振れ基調にある。また、一斉値下げでお得感が出ている既存機種に関しては、iPhone 6s/7が相対的に好調で、ディスプレーサイズが同じiPhone 8の不調をある程度補っていると見られる。

 iPhone Xについては、2017年11月3日の発売からまだ間もなく、生産遅れにより供給数量が限られていることから需給のひっ迫度合いを測りにくい。新機能であるTrue DepthCamera(3Dセンシングモジュール)の新しい使い方の提案やアプリなどが意外と少なく、現時点では同機種がヒット製品となるかどうかの判断は難しい。

 最大のボトルネックである価格を、外観や新機能で補えるかどうかが鍵となる。現時点では、Dual OISリアカメラの性能やフロントカメラのポートレート機能など、カメラに対する評価は高い一方で、外観に関しては賛否両論と言った印象である。3Dセンシングモジュールに関しては、デフォルト機能の顔認証やアニ文字以外の使い方に注目したい。アニ文字については、これを使ったカラオケ動画などがYouTubeに多数アップされている。現時点では、iPhone Xの生産数量の6~7割を占めると見られる64Gバイト機種よりも、価格が高い256Gバイト機種の方が需給がひっ迫している。

 生産は、3Dセンシングモジュールの発光部の組み立て歩留まり改善の遅れにより、大幅な遅延が続いてきた。ただし、2017年10月下旬から徐々に生産が立ち上がり始め、年内の供給可能数量は3000万~3500万台程度と考えられる。完成品生産も10~12月期に2900万台と予想しており、従来予想の3700万台からは下方修正したものの、2000万台割れの可能性もあり得ると考えていた約1カ月前に比べると改善が進んでいる。12月には、欧米先進国を中心に需要に対する充足率が高まっていくと予想される。

 米Apple社はiPhone Xが計画数売れる前提で、少なくとも年越し後の2018年1~3月期までは高水準の生産を続ける意向とみられる。2018年1~3月期は、iPhone全体で第1四半期として過去最高の生産水準を予想している。ただしリスク要因として、iPhone Xの販売が2018年の旧正月前あたりまでに失速するケースが考えられる。その場合は4~6月の生産水準が大幅に修正されたり、部品・部材メーカーに対する価格引き下げ圧力が高まったり、2018年モデルの価格の引き下げ検討がなされたりする可能性があるだろう。価格については、iPhone Xと同サイズの5.85型機種がベンチマークになる。