みずほ証券によるシャープの業績予想では、同社の最大の収益悪化要因はディスプレイデバイス事業である。カンパニー制への移行に伴い、各カンパニーが独立企業に近い形でPL、BS、CFに責任を負う形になる。その結果、カンパニーごとにさまざまな形で他社と連携を取りやすくなる。

 そこで問題になるのは「ディスプレー事業のみを切り離せば、シャープの業績はよくなるのか?」という点だ。筆者の見解は「否」である。

 切り離しの定義にもよるが、仮に同社持ち分の80%以上を売却し、連結からも持分法損益からも切り離すこととすれば、ポジティブにとらえる向きもあろう。というのも、2016年度のシャープの営業利益をみずほ証券は66億円と予想しているが、ディスプレイデバイスの赤字を除いたベースでは440億円に跳ね上がるためだ。実際、最終製品を手掛けるプロダクトビジネスは、比較的安定した収益をあげ続けている。

 だが、同社製品の競争力やブランド力は、多くが液晶パネルなどディスプレー技術に根差していることを再認識する必要がある。液晶テレビは、60/70/80型など大型サイズや4Kパネルで堺ディスプレイプロダクト(SDP:シャープ持分は38%)のG10工場の生産能力や技術力を活用している。32/40型などの中型サイズでも低コストの自社やSDPのパネルを使える。

 携帯電話では、自社開発・生産のCGS(連続粒界結晶シリコン)/LTPSやIGZOパネルを早くから取り入れ、他社に比べて低消費電力で大画面、狭額縁であることが同社製品の差異化要因となっている。そもそも同社のテレビや携帯電話がブランド力を築けたのは、液晶パネルがあったからである。

 もちろん、VIZIO社やXiaomi社(小米)のように開発と販売に特化するファブレスとしてのビジネスモデルもあり得る。しかし、シャープの事業規模(テレビで年間600万台、携帯電話で同500万台強)では、液晶パネルなしには性能やコスト面での差異化がいっそう困難になる。