大型液晶パネルの価格が、従来の想定以上のペースで上昇する兆しを見せている。32型HD(Open cell)は価格が底となった2016年3月の48米ドル程度から、同年7~9月に60~65米ドル程度へ上昇すると見ていた。ところが同年7月時点で最多価格帯が60米ドルに近づいており、同年8月には70米ドルを超えるオファーも散見される。40型も同様に、2016年7月に早々と100米ドルを超え、8月は110米ドル以上となっている。

 パネルメーカーは値上げの目標を32型で80~85米ドル(前回高値は2015年1~3月期の95米ドル程度)、43型で125~130米ドルと、営業利益が軽く2桁を超える水準に引き上げていると考えられる。安定推移が続いていた49型以上のフルHDパネル、下落が続いている4Kパネルに関しても、一部では値上げの動きがみられる。

 需給逼迫について、供給側の主要因は次の通りである。第1に、韓国Samsung Display社のL6工場(NBやモニター向け中心、G5で生産能力は16万5000枚/月)、T7-1工場(40型テレビやモニター向け中心、G7で生産能力は13万5000枚/月)の閉鎖観測。第2に、2016年4月までのパネル出荷が台湾Innolux社の地震影響を受けた。第3に、Samsung Display社の歩留まりの影響。

 需要側については、国慶節や年末商戦に向けてテレビブランドがパネル購買数量を増やす時期にあること、などが挙げられる。この点については、2016年6月時点と変わらない。

 韓国Samsung Electronics社、韓国LG Electronics社というテレビ大手2社の慎重姿勢にも変わりはない。強気なのは中国ブランドの一部、特にLeEco社など新規参入組やTier2ブランドにとどまる。しかし、パネル価格は想定以上の勢いで上昇している。

 背景として考えられるのは次のような点だ。第1に、Samsung Display社の工場閉鎖の影響により、2017年に向けて計算上、(現時点の業界コンセンサス需要見通しを前提にすると)2016年よりも需給がひっ迫する可能性が高まること。第2に、中国のパネルメーカー(BOE社)など、32~43型を主力とするメーカーがかなり思い切った値上げ提示をしていること。

 テレビブランドのパネル需要は、2016年10月にいったんピークを迎えるまでは減退する可能性は低い。値上げを受け入れないといけないのも実情である。