大型液晶パネルの今後の需給を読むための鍵は3つある。新工場の立上げ加速・供給増、新製品の実売動向、それにシャープブランドの攻勢とその影響である。

 このうち供給面に影響を与える新工場の立上げ加速・供給増だが、最大の注目点は、フル稼働に近い既存工場ではなく、新工場の立ち上げ加速の可能性である。この見方は従来から変わらない。しかし、後述の需要面の変動リスクとの比較では、需給に大きな影響を及ぼす可能性は低いとみている。

 2017年の大型パネルの生産能力は、韓国Samsung Display社の工場閉鎖影響を織り込むと前年比+1.4%に留まる。90%以上の高稼働率が続く前提でも、予想生産面積伸び率は+6.9%であり、現時点の需要予想と大きく乖離(かいり)していない。

 現在量産立ち上げ中の工場は、以下の通りである。

1)中国Innolux社のG8.6(45K/月、生産品目は50型/58型)、3Q中のフル生産が可能。
2)中国BOE Technology Group社のB10(G8:140K/月、同43型)は年末90K/月、2018年3Qに140K/月到達の前提。
3)中国HKC社の重慶G8(70K/月、同32型/50型)は年末55K/月、18年1Qに70K/月到達を想定。
4)韓国LG Display社では広州G8が加わる。ただし韓国坡州市のG8工場をOLED基板(Oxide)転換するため、生産能力に大きな変動はない。

 これら以外では中国CEC Panda(China Electronics Panda Crystal Technology)社の南京G8など既存工場の増産(55型)についても注意を払いたい。

60型以上の高価格帯の売れ行きは予想以下

 次に今後の需給を読むうえでの鍵となる新製品の実売動向を説明する。これには、パネルおよびテレビの価格とテレビの完成品メーカーのブランドの姿勢が関わってくる。

 テレビの価格は、製品によってスペックが異なるため同系列での比較は難しいものの、北米では、2016年春の新製品と比べて中型では数十米ドル、大型では100~150米ドル程度の値上げとなっている製品が多い。北米市場全体ではまずまずの販売動向(1Qは前年同期比+3%)であるものの、旧製品の販売もまだまだ多く、新製品の販売動向が見えてくるには今しばらく時間が必要と考える。

 北米の2Q販売数量は、前年同期比横ばい程度を想定しているが、テレビブランドの思惑に反し、60型以上の大型、2000米ドル以上の高価格帯の製品が売れていない。3Q以降もこの傾向が続けば、大型パネルの需要に影響を及ぼすおそれがある。

 一方の中国は1Qが数量ベースで前年同期比マイナス10%と不調であり、労働節(5月1日)の商戦も良くなかった。3Q以降、国慶節などで需要に改善の兆しが見えないと、パネル需給、価格動向に現在想定以上の悪影響が及ぶ可能性がある。