大型液晶パネルに関して、2017年以降に量産を開始する既存計画としては、台湾Innolux社のG8.6と台湾AUO社のL8増強を除いて、中国メーカーの案件が多い。

 BOE社(B10福清、B9合肥)、CSOT社(T6深圳)、HKC社(重慶)、CEC Panda社(咸陽、成都)など、G8工場が4拠点(42万枚/月)、G10.5工場が2拠点(27万枚/月)と、新規生産能力は非常に大きい。BOE社のB9は現時点では9万枚/月と発表されているが、敷地や部材供給能力などから考えると15万枚/月にまで拡張される可能性が高く、みずほ証券の予想にはそれを織り込んでいる。

主要各社のG10投資計画( 出所: みずほ証券エクイティ調査部作成)
主要各社のG10投資計画( 出所: みずほ証券エクイティ調査部作成)
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 大型パネル生産能力に占める中国勢の面積ベースのシェアは、2015年第4四半期には19%だったが、2016年第4四半期は22%、2017年第4四半期は26%、2018年第4四半期は31%、2019年第4四半期は36%と、右肩上がりの上昇が続くと予想する。2019年第2四半期には、韓国の33%を追い抜くとみている。従来、この逆転は2019年第4四半期に起こるとみていた。

 韓国勢は、Samsung Display社が不採算のノートブックやモニター向け、40型以下からは事実上撤退の方向である。LG Display社は中国の広州G8工場を継続的に拡張する一方、韓国内のG8工場はOxideに転換し、有機ELパネル向けのバックプレーンとする方針である。Oxideはマスク数が多いため、生産能力は減少する。LG Display社がG10.5でどの程度の規模の投資を行うかにもよるが、中国と韓国の生産能力の差は徐々に拡大していく可能性が高い。

中国メーカーの勢いは止まらず

 各社のG10.5投資計画はより一層熱気を帯びているが、案件によっては濃淡が出つつある。上記BOE社とCSOT社に加えて、LG Display社(Paju:Phase1は液晶、Phase2以降は有機EL、最大生産能力は9万枚/月を想定)、鴻海グループ(最大4拠点:液晶)、CEC Panda社(南京:液晶)が投資計画を持つ。ただし、HKC社(昆明:液晶)はややトーンダウンしている。

 鴻海グループは、SDPのもつIPや技術者を活用し、まずは広州でG10.5投資を行い(12万枚/月)、ほぼ同時に米国でも投資し、その後にインドや中国でさらに一拠点ずつ投資する計画だった。ところが足元の動きを見ると、広州工場はまだ装置発注などを行う段階になく、米国工場はG6 Oxideへ転換する動きがあり、インドは音沙汰なしである。ただし中国で広州の次にもう1工場投資する可能性が前回より高まっている、との感触である。

 LG Display社も、長期戦略としては有機ELに特化する方向だが、G10.5の有機EL投資についてはやや慎重な姿勢である。G10.5のOxide基板の均一性、インクジェットによる生産技術、コスト面などで依然課題を抱えていることもあり、Phase1はまずはアモルファスSi液晶での投資となりそうだ。G10.5有機EL投資の前に、G8の有機EL生産能力を増強する可能性も指摘できる。

 そしてもう一つの大きな動きが、BOE社やCSOT社が第2のG10.5工場に投資する可能性である。すなわちBOE社が武漢(Wuhan)で新工場に投資し、CSOT社はT6のさらなる増設かもう一棟(T7)かは不確定だが、その意向があり検討を進める段階に入ってきたと見ている。ただしこれらは、確固たる需要を前提とした裏付けのある投資というよりは、LG Display社や鴻海グループのG10.5投資への対抗措置の一つとも考えられる。今後の動向は要観察である。