当社は、大型液晶パネルの需給予想モデルを見直した。具体的には、需給ひっ迫局面は今がピークであり、2017年第3四半期は国慶節や年末商戦に向けたパネル需要が下支えし需給は均衡し、2017年第4四半期~2018年第1四半期にかけて悪化リスクが高まる、と予測する。

 ただし、パネル価格下落の時期が早く、速度が速い方が、2018年上期の需要喚起効果は大きい。その場合は2018年上期に再度需給は改善し、同年下期には中国BOE社のG10.5立ち上げなど供給要因からまた徐々に悪化局面に入る、というのが現在の大局観である。

 モメンタムとしては、パネル価格低下が意識されるパネルメーカーにはやや厳しいものの、2017年第3~4四半期の調整は主に価格面であり、大規模な生産調整は想定していない。そのため、部材メーカーに対する価格低下圧力や需要減少リスクは低いとみている。大型を中心に手掛けるパネルメーカーは、2017年内いっぱい2桁%の営業利益率を維持可能だろう。

 2017年は、韓国Samsung Display社の工場閉鎖(G5:L6、G7:L7-1)もあり、面積ベースの生産能力は前年比1.4%増とわずかな増加にとどまると予想する。2016年の推定実績と比べた2017年の予想生産面積伸び率は、サイズミックスの変化により従来予想の7.9%増から6.9%増に修正した。50型以上の比率が上昇し、歩留まり低下やタクトタイム長期化につながると見る。

 一方で、需要はノートブックやモニター市場が改善し、テレビも4Kなどを牽引役とする大型化が進捗すると見られることから、5.0%増(従来は4.7%増)の増加を見込む。つまり年間ベースでみると、パネルメーカーがフル生産を続けても需給は均衡から若干緩め程度に収まるとの見方に変わりはない。

 ただし、注意すべき点が二つある。第1に、供給能力は相対的に精度の高い予想が可能であるため、売り手(パネルメーカー)市場の年は、買い手の完成品ブランドは最終需要の動向にかかわらず早めに計画調達数量の確保に走る。

 その結果、実際のパネル需給は計算上とは逆に、年前半にひっ迫し、後半に緩和するケースが多い。しかも2017年は、鴻海グループの戦略変更の影響が加わっており、前半のひっ迫度合いが例年よりも強くなっている。具体的には、SDPのフル稼働維持、韓国Samsung Electronics社など外部顧客主体からシャープブランド主体へのパネル供給体制の変更、などである。つまり、実需以上にパネルが購買され、在庫水準が上昇している可能性があるということである。

 第2に、パネル価格上昇により、テレビブランドの収益が圧迫されたり、テレビ価格引き上げを余儀なくされたりすることにより、最終需要に悪影響を及ぼす可能性がある。ここをどう読むかで、第3四半期以降の需給やパネル価格の見通しが変わってくる。