我々は、2016年におけるiPhoneの最終組立台数の予想を見直した。2016年に入って3度目の見直しで、すべて下方修正である。

 予想作成時には、考え得るダウンサイドリスクを認識し、リスクシナリオとして提示している。世の各種予想の中では最も現実に近いと我々は考えているものの、それでも見方が甘かったことを痛感している。下振れの幅や速度、市場全体の動向とのかい離など、これまでに経験のないレベルの大きな変化である。

 2016年2月上旬時点での組立台数見通しは、通期で前年比11%減の2億2600万台だった。これを同年3月に2億600万台(同18%減)へ、そして今回は1億8900万台(同25%減)へ引き下げた。第1四半期の見通しは4000万台で変更していないことから、修正対象は第2四半期以降。6s/6s Plusなどの既存製品、2016年9月の発売を想定しているiPhone 7の両方について、見通しを引き下げた。

 2016年のスマートフォン市場(生産出荷)については前年比横ばい~5%増と見ており、この見方は2015年第4四半期時点から変わっていない。2016年はいわば米Apple社が“一人負け”することを意味している。

 これには、さまざまな要因が考えられる。先進国や中国においてiPhoneが一通り普及してしまったこと、6s/6s Plusが想定ほど売れていないこと、開発期間が2年と長く機動的な新製品投入ができていないこと、ローエンド機種を展開していないこと、ドル独歩高の影響により新興国での拡販が難しくなっていること、価格引き下げによる需要喚起をほとんど行ってこなかったこと、などだ。

 統計数字だけを見ると、Apple社がAndroid勢にシェアを取られている形となる。だが、iPhoneユーザーがAndroidに乗り換えたわけでなく、6s/6s PlusがiPhoneユーザーの買い替えを喚起するには至っていないこと、および新興国における新規スマートフォンユーザーでiPhoneを購買できる所得層が限られていることが背景にあると我々は見ている。