みずほ証券では、日本やアジアを中心に多くのiPhone/iPadバリューチェーン企業(部品・部材・装置・組立・流通など)の動向を分析し、iPhone/iPadの生産動向の把握や見通しを行っている。

 2017年第1四半期におけるiPhone全体の生産台数は、前年同期比19%増、前四半期比42%減の4700万台を見込んでいる。機種別内訳はiPhone 6/6s/7が2200万台(うち1800万台がiPhone 7)、iPhone 6 Plus/6s Plus/7 Plusが1900万台(うち1700万台がiPhone 7 Plus)、iPhone 5s/SEが600万台である。

 2017年第1四半期はiPhone 6s/6s Plus/SEなど、旧機種の増産の動きが目立つ。iPhone 7/7 Plusに関しては、7が若干弱めで7 Plusが若干強めと、2016年末までの流れと変わらない。

 iPhone全体では前四半期比42%減と、2016年第1四半期における前四半期比47%減と大差ない大幅な調整である。ただし、iPhone 6s/6s Plusを主力としていた2016年とは状況が異なる。

 iPhone 6s/6s Plusに関しては、米Apple社は2015年第4四半期の需要を実態よりもかなり強く見積もっていたと見られる。加えて、供給不足を起こさないように、部品・部材の調達を多めに行ったり、多めの調達計画を出していた。この結果、需要が想定ほどではなかったと同社が気が付いたタイミング(2015年末)では、部品・部材の在庫が相当程度あったと我々は見ている。

 これに対して今回は、iPhone 7/7 Plusの最終需要を当初から慎重に見て、実需ベースの発注しかしていないと考えられる。2016年12月末の在庫回転日数が目標レンジである5~7週間の下限と、非常に低かったことがその証拠と言える。

図1●iPhone製品チャネル在庫水準の推移と四半期ごとの変化(100万台)(出所:会社説明内容を基にみずほ証券エクイティ調査部推定)
図1●iPhone製品チャネル在庫水準の推移と四半期ごとの変化(100万台)(出所:会社説明内容を基にみずほ証券エクイティ調査部推定)
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図2●iPhoneの推定セルスルー台数および在庫回転週数(出所:会社説明内容を基にみずほ証券エクイティ調査部推定、在庫回転週数は四半期=90日として(期末チャネル在庫)÷(翌四半期sell-through)で計算。2016年12月末は会社のコメント(Low end of target range)を表示)
図2●iPhoneの推定セルスルー台数および在庫回転週数(出所:会社説明内容を基にみずほ証券エクイティ調査部推定、在庫回転週数は四半期=90日として(期末チャネル在庫)÷(翌四半期sell-through)で計算。2016年12月末は会社のコメント(Low end of target range)を表示)
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 2017年第1四半期以降に関しても、同社は慎重な見方を続け、実需を上回る発注は行っていないと考えられる。バリューチェーン側も冷静な対応を行っているため、完成品、半製品、部品・部材ともに余剰在庫の問題はないと我々は理解している。むしろ、旧機種の増産は2016年末時点では想定されていなかった事象であり、その分だけバリューチェーンにはポジティブだろう。

 2017年第2四半期の生産台数については、iPhone全体では前年同期比24%増、前四半期比16%減の4000万台を予想している。機種別内訳は、iPhone 6/6s/7が2000万台(うち1600万台がiPhone 7)、iPhone 6 Plus/6s Plus/7 Plusが1300万台(うち1100万台がiPhone 7 Plus)、iPhone 5s/SEが600万台である。

 iPhone 7/7 Plusに関しては、2017年7月末~8月上旬に始まると想定される次機種(iPhone 8)の作りこみに備え、生産を抑えると我々は予想している。実需もしくは交換・リペア用需要が想定を上回るとみられた場合は、多少の増量もあり得るだろう。旧機種に関しては、iPhone 6s/6s Plus/SEなどが依然として前回の想定を上回るペースで生産されるとみており、生産台数の下支え要因となりそうだ。