筆者は日本やアジアを中心に、米Apple社のiPhone/iPadの部品・部材・装置・組立・流通などにかかわる多くのバリューチェーン企業の動向を分析し、iPhone/iPadの生産動向の把握や見通しを行っている。本コラムへは投稿しなかったが、筆者は2017年12月22日、2018年1月18日、同月29日と、1カ月強余りの間に予想修正のレポートを3回執筆している。

 ここでの予想は、日韓台中米などのバリューチェーン企業、みずほ証券米国のApple社担当アナリスト、および東京のテクノロジー調査チームとの議論のほか、筆者独自の仮説、需要予想、バリューチェーン動向の分析などを基に作成している。向こう3年程度の新機種のスペックや部品構成、コストなどの中長期ロードマップと、向こう1年程度の短期の生産数量予想がその核となっている。今回、短期見通しを1カ月強で3度も修正するということは、とりもなおさず筆者の読みが甘かったということである。

 修正の背景は、最新機種であるiPhone Xの減産だ。10万円を超える価格設定が最大のハードルであり、それを肯定する価値提案ができるか否かが鍵だと考え、需要下振れのリスクは認識していたつもりだった。だが、想定以上に状況が厳しいことが露呈した形である。一方で、新機種のうちiPhone 8 Plus、旧機種ではiPhone 7/6sなどは好調に推移しており、iPhoneの買い替え需要そのものはきちんと刈り取れている印象である。

 iPhone Xの不振については、消費者が価格相応の価値があると判断していないことに起因すると推測している。価格は米国で999米ドルであり、販売価格を米ドル換算すると1300米ドルを超える国や地域も多い。価格の高さに加え、3Dセンシングモジュールの新たな使い方の提案もない。

図1●各国・地域のiPhone Xの価格(出所: 会社資料よりみずほ証券エクイティ調査部作成)
図1●各国・地域のiPhone Xの価格(出所: 会社資料よりみずほ証券エクイティ調査部作成)
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 2018年に発売されると想定されるiPhoneの新機種は、5.85型OLED(Xの後継機)、6.46型OLED(新機種)、6.06型液晶(新機種)の3種類である。バリューチェーン企業に対しては価格引き下げ要求が強まる可能性があり、要注意だ。また、2019年以降の新機種では、3眼カメラやリアカメラでの3Dセンシングモジュールの採用なども考えられる。ハードウエア、ソフトウエアともにどのような機能進化を見せるのか、引き続き注目したい。

 以下では2018年1月29日時点の筆者のレポートの内容を紹介する。まずはその前提となる1月18日時点の予想に触れておきたい。