「下請け」という言葉から透けて見えるもの

――確かに、そういった風潮が全くないわけではないのかもしれませんが、それは日本だけの問題なのでしょうか。むしろ欧米などの方が、設計と製造の職務が明確に分離されていて、設計の権限が強い印象を受けます。

北山 欧米は水平分業が前提になっているので、良くも悪くもドライな関係の中でやっていると思います。上下関係というよりも、契約による関係性で役割分担をしている感じです。

 日本の場合、あうんの呼吸といいますか、設計の図面に不備があっても、製造はその意図をくみ取って、設計が欲しいものを造ってきます。海外では、そんなことは考えられません。図面に不備があったらその通りに造ってきますし、そのことに文句を言っても「図面はそうなっていた」と言われておしまいです。設計が上ということはなくて、きちんと責任や職務を果たさなければならない。

 「下請け」という言葉もそうですが、日本は製造を“下に見る”風潮が根強くあるのかもしれません。加えて、製造現場の弱体化がこのような状況を招いた側面もあると思います。日本にあった工場が海外に移転したことで、人件費が安いから多少手間が掛かってもいいという思いもあったかもしれません。手間が掛かる図面に不満があっても、設計にフィードバックすることも少なくなり、我慢して造るだけになってしまうと、設計からはどうしても甘く見られてしまうのでしょう。