技術力があるのに、もうからない。その原因の一端は、技術者や経営者が変動費ばかりを見て、固定費の管理がおろそかになっていることにある。「プロフィタブル・デザイン」(利益獲得設計)の提唱者であるプリベクト代表取締役の北山一真氏はそう指摘する。なぜ原価の大きな割合を占める固定費が見過ごされてしまうのか、同氏に聞いた。(聞き手は、高野 敦)
――北山さんが書いた「『iPhone』がもうかる本当の理由」は、今のところ日経テクノロジーオンラインで今年最も読まれている記事です。内容をかいつまんでいうと、米Apple社が約30%と非常に高い営業利益率を確保している秘訣は、固定費の徹底的なマネジメントにあるというものでした。
この記事に対する読者の反応をSNS(Social Networking Service)上で見ると、「Apple社にそんな一面があったとは…」「その視点はなかった」といった感想が多かったのですが、一方で「自分は知っていたよ」という意見もちらほら目にしました。
そこで新たな疑問が湧いてきたのですが、前述の記事で北山さんが指摘されていた固定費マネジメントの重要性を、多くの日本企業は知らなかったのか、それとも知っていたけど実践できなかったのでしょうか。かつての日本企業は固定費マネジメントを実践していたというのが北山さんの見方なので、「知らなかった」というよりは「見失っていた」と表現する方が正確かもしれませんが。
北山 そもそも私がApple社の事例から固定費マネジメントの重要性を見いだせたのは、私が会計の視点で設計を見ているからだと思っています。
私は今でこそ設計改革のコンサルティングを手掛けていますが、工学部を出ているわけでも、かつて技術者だったわけでもありません。しかし、会計の視点から設計を見ている人は世の中にそれほど多くありません。そこが私のコンサルタントとしての強みです。
とはいえ、会計の専門家というわけでもないのです。公認会計士の資格も持っていません。良くも悪くも中途半端だからこそ、「会計視点に基づいた設計改革」、あるいは「設計と原価の融合」ということができるのだと思っています。一般的な会計の専門家は、設計の中身を見ようとはしませんから。会計の視点で設計をみる人がいなくなったことで、日本の製造業は固定費マネジメントを見失ったのだと思います。