日付が1日ずれますが、36年前の1980年10月5日、日本武道館で全ての曲を歌い終わった歌手山口百恵(以下敬称略)は、ステージ中央にマイクを置いて舞台裏へと歩いて去っていきました。その後、芸能界から引退し、表舞台に一切立っていないことはよく知られています(例えば、このような記事(日経ビジネスオンライン)をご参照いただけるかと思います)。

 その前月に出版した自叙伝「蒼い時」。山口百恵は「生きている中で、何が大切なのかをよく知っている女性こそが自立した女性なのだ」と記しています。今となっては別に女性に限ったことではないと思いますが、大事なものが何かがきちんと分かっている人は強い。であればこそ、トップスターの座を投げうつことができたのでしょう。

 という話を、「ものづくり」の2016年8月29日~9月29日のランキング第1位「マツダが『走る歓び』を進化させた理由」を読んだときに、何となく思い出しました。特に、「中核技術で自分たちにしかできないものを追求していこう。何か1つしか選べない。そう考えたのです」(3ページめ)というあたりのくだりです。「蒼い時」になぞらえて言えば「ハイブリッド車でも電気自動車(EV)でも内燃機関でもいい、メーカーとして生きていく中で、何が大切なのかをよく知っている会社こそ…」といったところでしょうか。

 ともかく、マツダの方針の明快さは、多くの読者の共感を呼んでいる模様です。このランキング第1位の記事は連載「品質の明日」に掲載した、同社執行役員で営業領域総括、ブランド推進・グローバルマーケティング・カスタマーサービス担当の青山裕大氏へのインタビュー記事の後編。前編もランキング第3位に入っています。さらに、第4位、第10位は同社品質本部副本部長兼品質統括推進部長の神岡隆氏へのインタビューの前後編です。

 第12位の「数百部品相当分を一発造形」もクルマの話題。3Dプリンターで車体をまるごと成形した米Local Motors社の取り組みです。日経ものづくりに掲載した記事を2016年10月21日までの期間限定で無料公開しています。Local Motors社も、単に3Dプリンターでクルマを造りたいわけではなく、多くの人にそれぞれ合ったクルマを短期間で提供することが最も大事であると考えた上で、施策の1つとして3Dプリンターを使っているのです。

 そのLocal Motors社の技術者James Earle氏に、東京・ビッグサイトで開催するイベント「FACTORY 2016 Fall」での講演に来ていただけることになりました(聴講無料、同時通訳あり)。同イベントでは、ランキング6位「デンソーはなぜ工場のIoT活用を急ぐのか」などについての講演の予定もあります。