エネルギー業界の関係者が集まると必ず話題に上るテーマ。それが、“ソフトバンクの本気度”だ。
東日本大震災後、被災地を訪れたのを契機に、孫正義・ソフトバンクグループ社長は、再生可能エネルギーの普及拡大を訴え始めた。固定価格買取制度(FIT)における太陽光発電の買取価格が42円/kWhと、今思えば破格の高額になったのも、孫社長の強い働きかけがあったからこそだ。
通信自由化は、規制緩和を声高に訴え、既存の料金体系を壊し、大手三社の一角を占めるまでに成長させた孫社長の存在なくして語れない。だが、電力小売りの全面自由化に際して、ソフトバンクグループの存在感はさほど大きくない。通信と電気のセット販売を手がけているが、主力の携帯電事業の付帯事業としての色彩が強い。FIT開始当初は、一気呵成にメガソーラーを手がけるも、買取価格の低下に伴い、かつての勢いは失われつつある。
では、ソフトバンクは今後、エネルギー事業にどれだけ本気で取り組むのか。そのヒントとなる記事がある。
8月22日~9月22日の「エネルギー」サイトのランキングで第7位にランクインした「「アジアスーパーグリッドの実現性」「世界最大のメガソーラー」、孫氏が明らかに」である。この記事は、孫社長が自然エネルギー財団会長として、9月9日に同財団の設立5周年記念シンポジウムで講演した様子をまとめたものだ。
実は、このシンポジウムの後、複数の取材先から「孫さんの熱意が戻ってきたような印象を受けた」と言われた。多忙を極める孫社長が、シンポジウム会場に滞在していた時間が非常に長かったことに加えて、講演内容から“熱気”を感じた人が多かったようだ。
講演の中核となったのが、モンゴルから中国、韓国、日本と4カ国を繋ぐ「アジアスーパーグリッド構想」だ。孫社長がアイデアを披露した当時は、荒唐無稽といった反応が大半だった。ところが、2016年1月に、中国・国家電網のリュウ・ゼンヤ前会長に出会い意気投合。両氏が声をかけた韓国電力公社(KEPCO)、ロシアの送電網会社であるROSSETI社も関心を示し、この4社で電力網の国際連系を推進するための調査、企画立案を目的とした覚書を2016年3月に締結した。シンポジウムで孫社長は、「採算が合いそうなことが見えてきた」と発言している。
孫社長は「アジアスーパーグリッド構想は人生をかけて完遂する」と周囲に語ったとも言われる。ソフトバンクの本気度は、まだまだ業界関係者の大いなる関心事であり続けるだろう。