ここ最近、日経テクノロジーオンラインで好評を博しているコラムの1つが、旬な技術テーマの特許出願動向を分析した「特許庁レポート 特許分析から探る日本の競争力」です。その名の通り、特許庁自らが日本や世界各国の特許を分析し、各テーマの競争状況を探っています。今回は、人工知能について分析した記事がよく読まれていました。

 人工知能は過去にも何度か“ブーム”になっており、昨今の盛り上がりは「第3次人工知能ブーム」などと呼ばれることもあるようです。とはいえ、今回の“ブーム”にはきちんとした技術の裏付けもあります。前出の記事によれば、近年の人工知能技術の進展の背景には、[1]人工知能に関する基礎理論が進展したこと、[2]インターネットの普及により大量のデジタルデータを活用できるようになったこと、[3]コンピューターの処理性能が向上したこと、という3つの要素があるそうです。

 この3つの要素のうち、[2]と[3]についてはIoTが注目されている理由と非常に似ていると、個人的には感じています。例えば、ものづくりの分野でも「スマート工場」のようなIoTの活用に向けた動きが進んでいますが、その中で人工知能が及ぼすインパクトも大きいと考えています。具体的には、ロボットをはじめとする機械の制御や、サプライチェーンにおける需要や適正在庫の予想などにおいて、人工知能が有望視されています。実際、ファナックはディープラーニングなどの機械学習技術に強みを持つベンチャー企業のPreferred Networks(PFN)に出資しました(関連記事)。トヨタ自動車も人工知能の研究に今後5年間で5000万米ドルを投入し、クルマやロボットへの応用を目指します(関連記事)。

 前出の人工知能について分析した記事によれば、人工知能に関連した特許出願は米国が突出しているとのこと。出遅れている日本が巻き返すには、大量のデータを収集・活用する体制を整えることに加えて、この分野の人材育成が欠かせないと指摘しています。