ソフトバンクが英ARM社の買収を発表して1カ月。「エレクトロニクス」サイトのランキング上位を独占したのは関連記事だった。孫正義氏が率いる注目度抜群のソフトバンクと一般にはなじみの薄いARM社の組み合わせ、3兆円超という巨額の買収費用…。誰もが一言語りたくなる話題性がある。(関連記事の一覧はこちら

 このニュースを日経電子版の「日経速報」で知ったとき、記者は「えっ」と声を上げて驚いた。その時、「ソフトバンク、ARM買収の狙いは何か」(ランキングトップの記事タイトル)と頭に浮かんだのは、IoTシステムでの課金インフラを作りたいのではないか、というものだった。根拠はなく、その後もこの視点で取材していないが、現在に至り依然そのような気がする。

 孫氏がARM社に着目した理由の一つはセキュリティ技術だという(関連記事)。ARMベースのマイクロプロセッサーと組み合わせて、扱うデータを必要に応じて秘匿する「TrustZone」と呼ぶ同社の技術は、IoTの端末(エッジ)側からサーバー(クラウド)側までの場所で使える。

 このセキュリティ技術で課金インフラを構築すれば、生のセンサーの情報や加工・解析したデータなどの価値と利用に応じて、対価をやり取りする仕組みができる。いわばIoTの課金インフラである。IoTのエコシステムにおける利益の分配は課題となっており(関連記事)、安全で低コストの課金システムは欠かせない。