日本の風力発電技術はなぜ海外勢の後塵を拝しているのか。今回のランキング1位の記事は、この疑問に答えてくれました。一言で言えば、日本の環境が風力発電に不向きなために、国内市場が育たず、技術開発が進まなかったためとのこと。その後、海外製の風力発電機を導入したところ、日本の環境の過酷さゆえに故障が相次ぎ、イメージ悪化に拍車をかけたとも。環境が過酷な分、他国よりも優れた製品が生まれて世界で勝負するという筋書きもありそうですが、現実はそう簡単ではないようです。

 この問題が他人事に思えないのは、趣味でウインドサーフィンをしているからです。競技人口などの国内市場の小ささはもとより、日本の風が不向きなことも身に染みて分かります。その名の通り風に加えて波もあると最高に楽しいスポーツですが、両者が揃ってやってくる日は一年でも極めてまれ。といいますか、一番のシーズンは西高東低の気圧配置がバッチリ決まる真冬だったりするのです。暖かさと強風と整った波面とを兼ね備えた海外のゲレンデを夢見つつ、氷水のような海のグチャグチャの波に巻かれるのが次第に楽しみになってきたりします。これでは、国内でメジャーなスポーツになれなかったとしても不思議はありません。

 こんな環境ですから、世界で勝てる選手は日本からはなかなか登場しないというのが常識でした。それが思い込みにすぎないことを、つい最近思い知らされました。杉匠真選手、13歳。今月、スペイン領のカナリア諸島で、Professional Windsurfers Association (PWA) が開催した大会の同年代の部で準優勝に輝きました(発表資料)。それなりの練習期間はあったとはいえ、初めて訪れたゲレンデで勝つのは至難の技。父親はウインドサーフィンのインストラクターですが、本人は決して恵まれた体格ではありません。それにも関わらず、元世界チャンピオンの息子を3位に抑えての堂々の成果です。

 筆者は彼を子供の頃から知っています。あっという間に世界のトップに躍り出た勢いには驚くばかりですが、むべなるかなと思ったのも事実です。なぜなら彼は時間さえあれば、ずっと海の上にいるのです。風が吹いても吹かなくても、波があろうとなかろうと。10時間もぶっ続けで乗り続ける体力以上に驚かされるのは、その日常を持続できる意欲と集中力の高さです。4倍近く長い時間を生きてきた筆者も、脱帽するしかありません。今の日本に必要なのは、いたずらに長い過去の経験よりも、はち切れんばかりの若さなのかもしれません。

杉匠真選手
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杉匠真選手
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杉匠真選手
(写真:杉純太郎)
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