2016年5月30日~6月30日の日経テクノロジーオンライン「ものづくり(総合)」の記事アクセスランキングは、前回に引き続き、日本科学技術連盟(以下、日科技連)が開催した「第102回 品質管理シンポジウム」(2016年6月2~4日)の登壇者インタビューがよく読まれました。1、2、4、5位はいずれも前回に続いてのランクイン。3位の『「悪事を働かなくてもお金は稼げる」 グーグルの哲学』は実際の登壇者の講演レポートと、1~5位が全て同シンポジウム関連でした。トヨタ自動車・先進技術開発カンパニー プレジデントの伊勢清貴氏の語るクルマの将来像、ソニー元幹部や元米Google社日本法人社長を歴任した辻野晃一郎氏〔アレックス(本社東京)代表取締役社長兼CEO〕から見た日本メーカーの課題など、確かに興味深い内容です。

 実は筆者も同シンポジウムの初日に行われた伊勢氏や辻野氏の講演を拝聴しました。辻野氏の講演で印象に残っているのは、同氏がGoogle社に移って『日本から何か新しい提案をしようとすると「そのアイデアは世界にスケールする(広がっていく)のかを最初に聞かれること」』(3位の『「悪事を働かなくてもお金は稼げる」 グーグルの哲学』から引用)にショックを受けたという下りです。Google社では常に、地球規模で世の中を大きく変える技術の開発を意識しているというのです。だからこそ、自動運転や人工知能、ロボットなど、次々と斬新な技術を生み出しているのでしょう。こうした姿勢・視点は日本企業が特に弱いところです。ただ、一朝一夕にGoogleのようなマインドセットに変えられるかというと、かけ声だけではそう簡単なことではないだろうと講演を聞きながら感じました。

IoTへの不安と期待

 今回のランキングでもう1つ目立ったのは、7、8、14、18位の「IoT(Internet of Things)」やスマート工場関連の記事です。しかも、以前の記事が長く読まれています。8位の「デンソーはなぜ工場のIoT活用を急ぐのか」は4月の記事ですし、14位の「スマート工場で出遅れた日本、これから何をすべきか」に至っては2015年7月の記事です。

 取材先でときどき聞くのは、「IoTでどう製造業はどう変わるんでしょう」「スマート工場って結局何なんでしょう」といった声。何か大きな変化を迎えているようだが、今ひとつ具体像がイメージできないと感じているようです。だからといって傍観を決め込んで潮流に乗り遅れるわけにはいかない。強い関心の背景には、そうした不安感もあるようです。