太陽光発電に風力発電――。再生可能エネルギーの導入は、止まることはなさそうだ。

 5月23日~6月23日の「エネルギー」サイトで最も読まれた記事は、調査会社のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)が発表した、エネルギー長期予測の記事だった。

 BNEFは2040年までに世界で新たに導入される発電設備への新規投資のうち、約3分の2を再エネが占めると予想している。加えて、太陽光と風力のコストは今後、急速に低下すると分析。環境志向だけではなく、「安い電気」として再エネが活用される日が来ると予測する。

 既に世界では、再エネ電力の調達に動く企業も出てきた。ここ最近では、米国ネバダ州の自治体や企業の動向が相次いで報じられている。第5位にランクインした「米ラスベガス市、2017年に電力需要を「再エネ100%」に」や、第17位の「米大手電力、世界最大のデータセンター向けに「100%再エネ」プラン」に詳しい。

 ネバダ州最大の電力会社、NVエナジー社は、自治体や企業の要請を受け、「100%再生可能エネルギー」電力プランの提供を開始した。ただ、米国の大手電力が最初から再エネ電力の供給に前向きだったかというと、そういうわけでもなさそうだ。

事業変革を求められる世界の大手電力

 ネバダ州は1月、「ネットメータリング」と呼ばれる制度を変更し、太陽光発電の「第三者保有モデル」が成立しにくい環境へと変わった。これは、ネバダ州の公益事業委員会が、火力発電を中心とした垂直統合型の電力会社であるNVエナジーに配慮したためと言われる。第三者保有モデルの増加は、太陽光の自家消費量の増加を意味する。NVエナジーにとって、販売電力量を減少させるビジネス形態だからだ。

 一見、NVエナジーなど大手電力は、増殖を続ける再エネ電源に既存事業を脅かされるリスクを軽減したかに見える。だが、BNFFの調査が示すように、分散型電源の導入は今後も止まりそうにない。今はまだ環境志向から再エネ電力の調達を進めている企業も、遠からず「安い電気」としての再エネ電力を求めるようになるだろう。再エネ電力をどのようにビジネスに取り込んでいくかは、急務となっている。

 独最大手のエーオン、第2位のRWE、仏エンジー(旧GDFスエズ)など、欧州の大手エネルギー会社が相次いで事業再編に踏み切ったのも、こうした事業環境の変化を捉えるためだ。実際、RWEのテリウムCEOは、事業再編を経て「プロシューマー・モデルの推進役になる」と明言している。プロシューマーとは、分散型電源の保有し、自家消費する需要家のことだ。

 再エネというと、固定価格買取制度(FIT)や補助金などに頼った官製市場というイメージが依然、強いかもしれない。だが、大量普及とそれに伴うコスト低減は、再エネの位置づけを変えていくだろう。もちろん、日本も例外ではない。

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