いま自動車産業で最も注目を集める経営者は、米テスラ・モーターズのイーロン・マスク氏だろう。飛ぶ鳥を落とす勢いのマスク氏が、オンライン決裁システムのPayPal(ペイパル)を創業し、eBay(イーベイ)に売却後、テスラを創業したことは広く知られている。
だが、マスク氏が太陽光発電事業を手がけていることは、日本ではあまり知られていないかもしれない。米国の太陽光発電市場で、急成長を遂げているソーラーシティ社がそれだ。
ソーラーシティは、太陽光パネルの「第三者所有モデル」で一気に存在感を強めた。太陽光発電の初期費用負担は小さくない。そこで、ソーラーシティは利用者宅の屋根などに太陽光発電設備を設置し、その資産を保有する。利用者は自宅の屋根の太陽光発電による電気をソーラーシティから購入する。電気料金が高い地域であれば、コストメリットも出る。
米国で第三者保有モデルが広がり始めたのは2008年頃だが、ついに日本でもこのビジネスモデルを手掛ける企業が登場した。それが、日本エコシステムの「じぶん電力」だ。今月のランキングでも、第三者モデルに関する記事が、「『第3者所有モデル』で急成長した米ソーラーシティ社」など、複数ランクインした。
価格競争への対抗策としての「再エネ電力」
4月1日に電力小売りの全面自由化を迎え、電力業界は一気に激しい価格競争に突入した。東京ガスやJXエネルギーなどの大手エネルギー会社のほか、ケイ・オプティコムなどの通信事業者、さらにはベンチャー企業まで、低価格を訴求している。
そんななか、価格以外の価値を模索する新電力が打ち出したのが、「再生可能エネルギーによる電力」だ。ソフトバンクなどが、固定価格買取制度(FIT)による「FIT電気」の比率をアピールし始めたのが、その証左だ。こうした新たな競争の様子は、第2位の「電力小売り全面自由化スタート、『再エネ比率』で火花」に詳しい。いわゆる「再エネ新電力」の登場である。
日本エコシステムも、再エネ新電力の一角を占める。電力自由化によって、家庭向けに電気を販売できるようになったからこそ、第三者保有モデルは日本でも提供が可能となった。
日経エネルギーNextは5月24日に「再エネプランで挑む新電力」と題したセミナーを開催する。日本エコシステムが第三者保有モデルの開発経緯などを解説するほか、「FIT電気比率60%」を打ち出したトドック電力、「顔の見える発電所」を手掛けるみんな電力の幹部が登壇する。電力小売り全面自由化が切り拓いた新たな電力市場の様子を感じて頂ければ幸いだ。