「スマートグリッドって言葉、すっかり消えちゃったよね」。エネルギービジネスの取材をしていると、昔の流行り言葉かのように扱われることが多いのが、「スマートグリッド」です。2009年に米ゼネラル・エレクトリックが、アメリカンフットボールの頂上決戦「スーパーボウル」のテレビCMを流したことで一世を風靡したのは、既に5年以上前のこと。オバマ政権発足後のグリーン・ニューディール政策に呼応した動きでした。
特に日本では、系統に関する様々な制約もあって、机上の議論の域を出ない時期が続いてきました。そうこうしている間に、東日本大震災が発生。エネルギー分野の関心事は、電力・ガスシステム改革へと移り、現在に至ります。
ところが、ここへきて復活の兆しが見えてきました。日経テクノロジーオンラインのテーマサイト「エネルギー」の1月のアクセスランキングには、「蓄電池+分散型電源」の記事がずらりと並んでいます。
第1位と第4位にランクインした、『動き出す再エネ併用型「大型蓄電池市場」』は、急拡大する太陽光発電への対応策として、大型蓄電池を導入し、ローカル系統制約をクリアしようと動き出した東芝三菱電機産業システム(TMEIC)の戦略分析です。そして第2位には、『電力のロス減らす「直流給電」いよいよ実用化』 がランクインしました。分散型電源と蓄電池を活用するだけでなく、直流給電を組み合わせることで、さらなる効率利用を進めようという動きが少しずつ顕在化しています。
100万kW級の火力や原子力発電所を中心とした大規模集中型の電力システムは、いまだ日本を支える基盤システムです。とはいえ、分散型電源を活用し、よりローカルで、効率よく電力を利用する仕組みは、世界の潮流にほかなりません。
スマートグリッドという言葉が、そのまま復活するわけではないかもしれませんが、そのコンセプトは2000年代後半に出てきたものと同じ。日本でも自由化の進展とともに、少しずつ電力システムの姿は変わっていく気配を感じます。