日経テクノロジーオンラインの電子デバイス系サイト、すなわち、「半導体デバイス」「半導体製造」「EDA・ソフトウエア」「アナログ」「電子部品」「デバイス」というテーマサイトで公開した全記事のうち、2016年1月11日~2月11日にアクセス数が多かった上位20の記事を下表にまとめた。

 今回のランキングで1位となったのが、マイコン市場の行方について展望した記事だ(第1位の記事)。業界の識者に意見を聞く「テクノ大喜利」の記事で、ルネサス エレクトロニクスなど半導体メーカーで30年間にわたり半導体開発に従事した、技術コンサルタントの清水洋治氏が、エレクトロニクス業界で2015年に話題に上がった言葉、2016年に新しい潮流を生みそうな言葉について綴っている。

 清水氏が、2016年には廃れるまたは下火になると思われる言葉として挙げたのが「マイコン」である。清水氏が書いているように、マイコンは、モーター制御、ディスプレー、センサー、LED、無線通信(BluetoothやZigbee、Wi-Fi)、測位システム(GPSやGLONASS)など、さまざまな用途で欠かせない部品として、巨大な市場を形成している。来たるべきIoT時代には、こうしたマイコンの需要が一見増えるように思われる。

 しかし、「IoTの普及、それに伴うセンサーや通信の増加によって、マイコン市場が増えるのではなく、むしろプロセッサーに飲み込まれたり、通信側のいちIPとして旧来のマイコンは飲み込まれ消滅しつつある姿がある」と、清水氏は指摘する。「以前のマイコンは、機器中で実行する重要処理を担う、応用機器の中核に置かれるチップだったが、2014~15年に登場した多くの新チップは、それまでマイコンで実行していた機能を、そのほかのチップに集約していくようになった」(同氏)と言う。

 新チップの代表例として、清水氏はApple社のiPhone向けのチップを挙げる。同社は2013年、「iPhone 5s」で、増え続けるセンシングデバイスのコントロール(常時オン)に最適化したマイコン「M7」を搭載、その後「M8」へと進化させた。しかし、2015年モデルの「iPhone 6s」で、「M9」をアプリケーション・プロセッサー「A9」の内部に、いちIPとして取り込んだ。清水氏はこの動きを「マイコンチップの消滅」と表現する。同様のマイコンをプロセッサー側のいちIPとして取り込む動きは、MediaTek社やHiSilicon社でも起こっているという。

 マイコンとは反対に、2016年に大きな動きにつながりそうな気になる言葉として、清水氏は「オリジナルCPU」を挙げる。「オリジナルCPUを持っているプレーヤーが、結果的には半導体市場の激戦を勝ち残っている」と同氏は指摘。代表例として、ARMコアの怒涛の展開にも関わらず、オリジナルの「Atom」コアで意地を見せるIntel社、ARM命令セットを用いてオリジナルコアを作り続けるApple社、Qualcomm社、NVIDIA社などを示している。