自然のパワーを感じさせる記事が並びました。日経テクノロジーオンラインのテーマサイト「エネルギー」の1月のアクセスランキングの結果です。記憶に新しい15年9月の鬼怒川氾濫の被害が2位、3位にはメガソーラーを脅かすイノシシ、7位に入ったPID(potential-induced degradation)と呼ばれる太陽電池劣化の現象は発生メカニズムがいまだにハッキリしないもようですが、9位の壱岐のメガソーラーなど、その被害が怪しまれる事例は少なくないようです。人類の英知が一矢報いているのは、1位の直流給電実用化の話題くらいでしょうか。
もうすぐ記者生活四半世紀の筆者にとって、思い出せる限り初めてのエネルギー関連の記事に、こうした話題が並んだのには、何かの因縁を感じます。これまでコンピューター関連の技術に関わることの多かった自分は、技術がもたらす明るい未来のことばかりを書き連ねてきました。そんな態度に反省を促すとばかりに、人知を超えた自然の威力を突きつけられた気分です。そういえばこの週末も西日本を数十年に一度の寒波が襲い、沖縄本島では観測史上初のみぞれが記録されたとか。
自然の気まぐれに右往左往する状況は、いつかは覆されるのかもしれません。1年ほど前に取材したスーパーコンピューターの泰斗、東京工業大学の松岡聡教授は、ビッグデータの蓄積とコンピューターの性能向上で、いずれは人の行動や自然の事象の未来予測が可能になると言い切りました(関連記事)。「数十年に一度」が連発されるこのところの天気予報に心を痛める自分にとっては心強い限りです。
こうした楽観論を吹き飛ばす警告を、つい先日受け取りました。すっかりただの時計になってしまったApple Watch(関連記事)の電池が、なぜか1日も経たないうちに切れてしまったので、ちゃんと充電されていることをしっかり確認してから就寝しました。ところが明朝目覚めて確認すると、満充電されているはずの電池の残量が50%を切っているのです。よくよく調べて原因に気づきました。充電用のケーブルのプラグが、コンセントから外れていたのです。
かなり力を入れないと抜けないプラグのはずなのに、一体どうして外れたのか。夜中にトイレに起きた自分がケーブルを引っ掛けでもしたのかとも疑いましたが、それに見合う衝撃を体が覚えていないはずがありません。何かの気の迷いだろうと、忘れかけていたその時に、追い打ちが掛かりました。もう一度、同じことが起きたのです。改めて思い返すと、そもそもApple Watchの電池が1日も持たなかったのは、何者かの操作のせいだったのでは。そういえば、脚立に上らなければ届かない物入れの扉が、ある朝突然、開いていたこともあった。ひょっとしたら江戸川乱歩の小説ばりに、人の目の届かぬ物陰に身を潜めた謎の人物が、自らの存在をそれとなく主張しているのではないのか。
真相はわかりません。知りたければビデオカメラで夜通し部屋の様子を撮影したりすればいいのかもしれませんが、そんな行動の不吉な顛末を描いたホラー映画を思い起こすと怖くてできません。だとすれば頼れるのは、進化を続けるコンピューターの処理能力くらいでしょうか。最先端のスパコンで、未知の出来事の原因を割り出すためには、一体どんなデータを集めればいいのでしょうか。