ここ1カ月ほどの「新産業」サイトの記事アクセスランキングは、いろいろな意味で東芝が目立つ結果となりました。その中でも、医療機器子会社の東芝メディカルシステムズ売却に関する記事がランキングの1位7位に入っています。

 経営再建に向けて待ったなしの施策が求められている東芝。2015年12月21日に発表した「新生東芝アクションプラン」(関連記事)において、東芝メディカルシステムズの株式の50%以上を他社に売却する方針を明らかにしました。

 少し前までヘルスケア事業をエネルギーとストレージに次ぐ「第3の柱」と位置付けていたにもかかわらず、なぜヘルスケア事業の中核となる東芝メディカルを売却しなければならないのでしょうか。アクセスランキング1位の「幻に終わった、東芝『第3の柱』」を執筆した大下記者は、東芝メディカルが東芝子会社の中でも“優等生”だったからであると指摘しています。すなわち、売り上げが拡大基調で利益も確保しているからこそ、短期間で買い手が見つかると判断されたというわけです。

 巨額の赤字を埋め合わせるために、虎の子である東芝メディカルを泣く泣く手放したのかもしれませんが、何とも寂しい気がします。個人的に最も気掛かりなのは、残された既存事業の持つ価値を東芝の経営者自身がどう見積もっているのかということです。それぞれの事業について、対外的にどのような“値段”が付くのかという話と、どれぐらいの価値を生み出す可能性があるのかという話は、同じようで実は異なると考えています。なぜなら、組織が持つ資産(特に知財やノウハウなどの無形資産)の価値は、それを使いこなす人によって変わるはずだからです。東芝メディカルのような有望事業の売却を決めた以上、東芝の経営者に求められているのは、残された事業に埋もれている価値を探し、それを最大限に引き出すことだといえます。

今となっては寂寥感が漂う東芝の発表資料(同社が2014年2月20日に開催したヘルスケア事業戦略に関する記者会見での発表資料の一部)
今となっては寂寥感が漂う東芝の発表資料(同社が2014年2月20日に開催したヘルスケア事業戦略に関する記者会見での発表資料の一部)