「うーん、面白くないから駄目!」
最初に作製したのが、部品を前後に動かしてスティックを引き抜くことを目指したタイプです。ただこの「部品上げ下げタイプ」ではスティックを抜くことはできませんでした。それどころかスティックが割れてしまうというハプニングもあったそうです。
続く「ねじタイプ」は、スティックを固定するおねじとスティックを引き上げるめねじを組み合わせた試作品です。おねじの可動部分でスティックを押さえ、めねじに差し込むことで完全にスティックを固定します。そしてめねじを回して、おねじを引っ張り上げてスティックを抜きます。ねじタイプではスティックを引き抜けましたが、「『面白くないから駄目』と上司に言われてしまった」(担当者)。加えて、ねじタイプはスティックがどれだけ抜けたかが視認しにくいという課題もありました。
その後、「巻上タイプ」や「ギアタイプ」を作製するも、納得のいく試作には至りませんでした。しかしギアタイプを製作した際、重要なことに気づきます。それはスティックを抜くには“スティックを浮かせる最初の力が重要である”ということです。そこで、スティックに「一定の力をかけ続ける試作品」から「大きな力を一瞬与える試作品」の開発を進めます。
そして5番目の試作品「カム&ギアタイプ」で大きく完成に近づきます。これはカムでスティックに力をかけ、ギアを利用して徐々にスティックを引き抜く試作品です。ただカムのサイズが小さかったため、力が集中しすぎて破損しやすい問題がありました。なのでカムを大きくし、ギアをなくしてパーツ点数を減らした「カムタイプ」を作製。最後に業務用冷蔵庫で冷やした非常に固いあずきバーで破損しないように改良を加えて、ぬけるんバーの原型が生まれました。
削れもしないあずきバーから、スティックを抜けるのか。製品を担当した技術者はかなり思い悩んだと言います。しかし無事ぬけるんバーを完成させ、おかしなかき氷 井村屋あずきバーが製品になりました。読者の方も製品を用いて、一味違ったあずきバーを楽しんでみてはいかがでしょうか。