ここ数年、世間の追い風はBluetoothに向いていたように思います。勃興するウエアラブル機器やIoT機器のためには省電力でスマートフォンと接続できる必要がありますが、Bluetooth Smart(Bluetooth Low Energy)がその要求を満たす唯一の方式だからです。かつて話題の中心にいたWi-Fiについてはあまり聞かなくなりました。Wi-Fiの主要目的だったブロードバンド接続という観点において、IEEE802.11nでその速度を十分満たせるようになったからでしょう。

 ただ、来年を考えると、Wi-Fiへの注目がもう一度集まると見ています。理由は2つあります。

 まずは「Wi-Fi Aware」という近接通信仕様に対応したスマホや無線機が出てくるためです。詳細は日経エレクトロニクスの2016年1月号の記事「ビーコン市場を狙う無線LAN、双方向を武器に新用途を開拓」を読んでいただければ幸いですが、Wi-Fiを使って“iBeacon以上”の用途を実現できるものです。iBeaconのようにビーコンモジュールから一方的に情報を配信することもできますが、例えば、スマートフォンから周囲にビーコンを発信して「対戦ゲームの相手を探す」「空いている公衆トイレを見つける」「助けを呼ぶ」といったことができます注1)。ビーコン送受信のタイミングは厳密に同期させているため、Wi-Fiを使いながらかなり省電力にできるそうです。

注1)もちろん、空いている公衆トイレを見つけるには、センサーなどでトイレの状態を監視し、問い合わせがあったときにその状態を返信できるような仕組みを用意しておく必要があります。