ここ数年、カー・ナビゲーション・システムの代わりにスマートフォンを使う人が急速に増えています。カーナビは一昔前だと車載機器の“花形”商品の一つとしてカー用品店の目立つ場所に置かれていましたが、今では店舗の隅に追いやられていることも珍しくありません。その一方で、店のアクセサリー商品の棚にはスマートフォンをカーナビとして使うための設置スタンドがずらりと並んでいます。最近では、スマホのナビアプリを操作する専用リモコンなども登場しました。

 確かにスマホのナビアプリの使い勝手やGPSの位置精度は年々向上しているので、「カーナビ専用機はいらない」と考える人が多いのも理解できますが、カーナビは紙の地図がなくても目的地に到着できる「憧れの機器」だったのを覚えている世代としては、少し寂しく感じます。ただし、「スマホが台頭したことで車載用地図がなくなりそうか」というとさにあらず。従来よりも高精度な車載地図の整備に向けた動きが加速しています。自動運転向けに開発されたcm単位(従来のカーナビ用はm単位)の位置精度を持つ地図で、2018年の実用化が見込まれてます。

図1 自動運転に使用する高精度地図のイメージ(図:ゼンリン)
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図1 自動運転に使用する高精度地図のイメージ(図:ゼンリン)

 レベル4(完全無人)のような高度な自動運転の実現に不可欠といわれていることから、自動運転車の開発を進める米Google社や簡易カーナビ機でも知られるオランダTomTom社、2015年にドイツAudi社、BMW社、Daimler社の企業連合に買収されたドイツHere社などが世界各地で高精度地図の整備を着々と進めています。日本でも、三菱電機と地図関連5社(ゼンリン、パスコ、アイサンテクノロジー、インクリメント・ピー、トヨタマップマスター)が2016年6月、国内自動車メーカー9社とともに、高精度地図の事業化を検討する「ダイナミックマップ基盤企画(DMP)」を設立しました。DMPの検討結果を基に、2017年に高精度地図の整備を目的とする事業会社が設立される予定です。