2015年12月2日からスタートした「システム コントロール フェア 2015」が、本日最終日を迎えます。初日に、会場をざっと1周してきましたが、あちこちのブースで人と機械の協働・協調をテーマにした展示が目を引きました。例えば、三菱電機は「人と機械の協働ソリューション」、オムロンは「安全柵レスソリューションは人と機械の協調制御への第一歩」といったコンセプトで展示をし、多くの来場者の注目を集めていました。今後、生産現場では人とロボットの協働作業が増えていくことでしょう。しかしこれって、安全の常識から考えると、受け入れがたいところがあるのです。

 それは、これまでの企業の安全への取り組みを振り返えると、よく分かります。ごくごく大雑把に言いますと、企業の安全への取り組みの最初は、KY(危険予知)やヒヤリハット、指差し確認が基本でした。要は、訓練によって人の注意力や判断力を磨いて安全を確保していたのです。けれど、人がどれほど訓練を積もうともミスはなくなりませんし、機械は必ず壊れますから、この取り組みには自ずと限界がありました。

 そこで、欧州が中心になって「人はミスを犯す」「機械は故障する」ことを前提に、機械やシステムなどのモノに対してフェールセーフなどの安全方策を施すことで安全のレベルを引き上げました。このときの基本的な考え方は、人と機械を時間的、かつ空間的に分離するというものです。時間的分離とは、人が作業するときには機械が停止し、逆に機械が動くときには人が作業をしないというもの。一方、空間的分離とは、人の作業空間と機械の作業空間とを完全に隔離するというもの。つまり、人と機械を分離した上で、人は人、機械は機械でそれぞれ安全を確保するようにしたのです。実は、この考え方こそが現代の安全の常識となっています。ですから、人と機械が同じ空間内で働いたり一緒に作業したりするというのは、この考え方に反する行為になるというわけなのです。

 ところが、この安全の常識に縛られていては、年々激しさを増す国際競争には勝てないという認識が徐々に広まりつつあります。例えばトヨタ自動車の高岡工場では、スペアタイヤの積み込み工程において人とロボットが同じ空間内に入って作業をします。これは、同社が、人を排除した自動化では現代の生産活動に必須なフレキシブルな生産への対応が難しいと考えるからです。加えて、人と機械を完全に隔離すると、稼働率が落ちて生産性が低下します。こうしたことから、今の安全の常識を覆すような事例が出始め、今回のSCFでも同様の展示が相次いだと考えられます。