今年5月に米国防総省が立ち上げた産官学プロジェクト「Flexible Hybrid Electronics Manufacturing Innovation (FHEMI) Institute」は、フレキシブルエレクトロニクスで機器の寸法・重量・消費電力・コストを継続的に改善しようとする意欲的なプロジェクトです。有力な大学と防衛関連企業が参加するとともに、民生機器メーカーの米Apple社なども名を連ねます。日本では、印刷に基づくPE(Printed Electronics)やフレキシブルエレクトロニクスの研究が盛んなので、対抗馬として注目すべきかもしれません。公開資料などから同プロジェクトの概要を紹介します。

 プロジェクトは、コストよりも性能・機能を重視する防衛用途で事業化し民生展開する、あるいは防衛用途でも民生分野の力を借りてコストを抑える、といったことを狙っているようです。応用は、生体情報を常時モニタリングするシート状センサーや、飛行機の機体表面を覆ってその状況を常時監視する“電子皮膚”などが考えられ、いずれも防衛と民生の両方での展開が可能です。

 米国政府が進めている製造業の復権政策に従い、材料から設計までのエコシステムを米国内で完結できるようにする狙いもあります。資金は1億7100万米ドル。期間は2020年までの5年間。エレクトロニクスとITの分野で機器の「軽薄短小」と低コスト・低消費電力を牽引してきたムーアの法則が停滞してからの新しいイノベーション源にしようという意図もみえます。