最近、米Line 6社の「AMPLIFi」というギターアンプで遊んでいる。これがネットへの接続を前提とする面白い機能をいろいろ搭載していたので、簡単にご報告したい。2014年に発売された製品なので、ご存じの方には何をいまさらという話なのだが、コンシューマー分野では数少ないIoTの成功事例かと思うので「ギターアンプ?関係ないや」という方にも少々お付き合いいただきたい。

 Line 6社はアナログシンセサイザーで有名なOberheim Electronics社出身の技術者が創業した会社であり、世界で初めてデジタルモデリング技術を採用したアンプを製品化したことで知られている。ヤマハが株式を100%取得して、2014年に完全子会社としている。

 アンプのデジタルモデリングとは、DSP(Digital Signal Processor)などのデジタル技術を駆使して、1台のアンプで何種類ものギターアンプのサウンドをシミュレートするというものだ。シビアに言えばあくまで「よく似たサウンド」なのだが、何種類ものギターアンプを揃えなくても1台だけでいろんな音が出せて、その気になれるのはありがたい。

 AMPLIFiはこのデジタルモデリング技術を使って、有名どころのアンプのシミュレートはもちろん「音を歪ませる」「遅延させた音を原音に重ねる」「位相をずらした音を原音に重ねる」「音量のダイナミクスを圧縮して音の粒立ちをそろえる」などギターの音を加工するエフェクターの機能をひととおり内蔵する。そして、スマホやタブレットで稼働する専用アプリを使って、Bluetooth経由でアンプを選択したりエフェクターを設定したりする。ギターとスピーカーの間にエフェクターを並べる順番も、タッチパネルのドラッグアンドドロップで簡単に入れ替えられる。専用アプリが担当するのは設定情報の選択、調整、保存などの管理だけであり、シミュレートはAMPLIFiの回路が実行する。このため、パソコンなどのソフトウエアで音色を加工するエフェクターと違って、ギターを弾いたタイミングと音が出るタイミングがずれてしまうこともない。

米国の女性歌手、Maria Muldaurが1970年代に発表した「Midnight at The Oasis」という曲を再生する専用アプリの画面
米国の女性歌手、Maria Muldaurが1970年代に発表した「Midnight at The Oasis」という曲を再生する専用アプリの画面
右横にこの曲の属性情報にマッチする設定情報を一覧表示している
[画像のクリックで拡大表示]