ホンダの「クラリティフューエルセル」
ホンダの「クラリティフューエルセル」
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 年末になると、特別企画として「【年末年始特集】専門記者が振り返る20●●年」を日経テクノロジーオンラインに掲載します(関連記事)。ここ数年、筆者はパワー半導体分野のトピックをまとめています。今回は先出しというかたちで、2016年に関するトピックを少しご紹介します。

 まずは次世代パワー半導体のSiCです。2014年にトヨタ自動車が、SiCパワーデバイスを駆動システムに使った試作車(ハイブリッド車)で公道実験を2015年から始めることを明らかにした上、2020年までの量産車適用を目指す、と宣言しました(関連記事)。これにより、SiCパワーデバイスの車載用途への広がりが、急速に現実味を帯びました。

 SiCに注目するのは、トヨタ自動車だけではありません。ホンダや日産自動車なども、SiCパワーデバイスの適用を視野に、研究開発を続けています。このうちホンダは、2016年3月に発売した燃料電池車(FCV)「クラリティフューエルセル」に、量産車として初めてSiCパワーデバイスを搭載しました(関連記事)。同社は、小さなFCスタックでもモーターの出力を高められるように、スタックの出力電圧を昇圧しています。この昇圧コンバーターに、SiCパワーデバイスを適用しました。従来のSiパワーデバイスを使用する場合に比べて、FC昇圧コンバーターの体積を40%小さくできました。

 SiCパワーデバイスが早くから採用されてきた鉄道分野でも、大きなニュースが2016年に発表されました。東海旅客鉄道(JR東海)が、2020年度から東海道新幹線で営業運転を開始する次期新幹線「N700S」に、SiCパワーデバイスを採用することを明らかにしました(関連記事)。駆動システムの小型・軽量化が狙いです。例えば、モーターを制御する装置である「CI(コンバーター・インバーター)」の質量を、現行のN700系の約2/3にしています。