先日、本コラムで触れましたように、日経テクノロジーオンラインでは学会との連携を広げ、日経テクノロジーオンラインの読者の皆さんにぜひ知っていただきたいコンテンツを学会機関誌から選び、その抜粋や要約記事を日経テクノロジーオンラインに掲載しています(関連記事1)。毎回多くの読者の皆さんに閲覧いただいており、大変好評を博しています。

 この取り組みは2014年10月、応用物理学会 機関誌からの抜粋記事転載から始まりました。既に1年が経過したことになります。日経テクノロジーオンラインに掲載された応用物理学会 機関誌からの抜粋記事を振り返ると、バイオ発電デバイス、ガンマ線検出器、熱電変換デバイス、超高速撮像技術、生体埋め込みデバイス、直近ではトランジスタ型強誘電体メモリーなど、電子機器の特性をドラスティックに変える可能性を秘めた研究内容が続きます。

 応用物理学会は技術分野に応じて11の分科会、そして規模は小さいものの新しい研究領域に挑む研究会、さらには確立した分野ではないものの萌芽期にある研究を対象とする新領域グループを設けています。多岐にわたる応用物理学会の領域から日々新たな研究分野を生み出し、育てる仕組みと言えるでしょう。その一端を、日経テクノロジーオンラインに掲載している抜粋記事に垣間見ることができます。

 多岐にわたる分野に横串を刺していくには、「一見関係なさそうな分野が、視点を変えると身近な存在である」ことを示していかねばなりません。こうした取り組みを半年に1回開催する講演会で進めるだけでなく、応用物理学会は毎月発行する機関誌『応用物理』による会員への情報発信を有効活用し、会員が新たな情報に接する機会を増やしているとのこと(関連記事2)。その一環として、これまでのPDF版の提供に加えて2015年8月号からは機関誌の電子書籍版の発行も始めました(機関誌『応用物理』の電子書籍ページ)。

 先日、『応用物理』の機関誌編集委員会 委員長を務める丸山茂夫氏(東京大学 大学院工学系研究科 機械工学専攻 教授注1))にお会いする機会がありました。ちょうどよい機会なので、学会が抱える各分野の専門家同士に横串を刺すため、どのような情報伝達手法を考えているのかを丸山氏に聞きました。学術分野のみならず、実業界では今、ロボットや医療/ヘルスケア、IoTなど、注目度が高い領域は異分野のコラボレーションに期待されることが多々あります。異分野に横串を刺す上で、応用物理学会の取り組みは参考になるかもしれません。

注1)丸山氏は、産業技術総合研究所 省エネルギー研究部門 総括研究主幹、エネルギーナノ工学研究ラボ 研究ラボ長、さらにフラーレン・ナノチューブ・グラフェン学会 会長も務める。