「使い方が悪かった」。製品事故が発生した際、その原因をユーザーの誤った使用方法とするケースが少なくありません。もちろん、どんな使い方をしても絶対に安全な製品を開発するのは不可能と言っていいでしょう。しかし、「事故原因は使い方の悪さ」で終わらせず、さらに一歩踏み込んで原因を究明することこそが、再発防止には必要なはずです。

 『日経ものづくり』2015年10月号の「事故は語る」で取り上げたエスカレーター事故も、設備や管理に瑕疵はなく、被害者の誤使用が原因だったという結論が国土交通省から公表されました(関連記事)。しかし、その後に実施された消費者庁の消費者安全調査委員会の調査では、事故防止対策の不備があったとして、再発防止策を提言。さらに日経ものづくりの記事では、製品の特殊な形状がリスクを高めていたことも指摘しました。

 この事故は、上りエスカレーター降り口の手すり(ハンドレール)に後ろ向きに近づいて臀部が接触した被害者が、体ごと持ち上げられて階下の床まで転落してしまったというものです。このケースで最初のポイントとなるのは、後ろ向きにエスカレーターの手すりに接触することを想定しなくてもよいのか、ということです。