Audi本社
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ミュージアムの展示車
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 Audi本社があるドイツ・インゴルシュタットを訪れました。ミュンヘンから近い同社ですが、何より驚いたのが、本社敷地に気楽に入れ、そこに複数のレストランやカフェ、ブランドショップ、ミュージアム、納車センターが集まっていることです。

 日本の自動車メーカーといえば、受付のある1階にクルマは何台か置いてあるのですが、それはあくまでも商用で訪れた来訪者が暇つぶしにのぞくためのもの。一般ユーザーが気楽に本社のビルに入ってクルマを見られるという雰囲気はめったにないといえるでしょう。

 もちろん例外もあります。唯一、日本でそうした設備が充実している本社を持つのが、日産自動車ではないでしょうか。横浜にある本社ビルの1階は、広いスペースに歴史的車両や現行の販売車が置いてあるとともに、カフェやグッズ販売コーナーがあり、一般の来訪者が気楽に入れる雰囲気を作り出しています。ホンダの青山本社にも、1階に車両の展示やカフェ、グッズ販売コーナーなどがありますが、日産よりもはるかに小規模です。

 日本の自動車メーカーとAudi社の規模が桁違いに違うのは、本社地区全体がこうした一般の人を受け入れるスペースを持っていることです。最初に訪ねたビルは、会議施設とカフェなどがあり、続いて昼食のためにレストランに移動しました。レストランがあるビルには、グッズの販売コーナー、一度に10台分以上の納車が可能なスペースを持つ納車センターが一体化しています。

 さらに、納車センターの前にはクルマが100台ほど置けるような広大な広場があり、クルマを受け取ったユーザーは、そこにクルマを置いて様々な本社施設を楽しめるようです。カフェのあるビルには工場見学ツアーの申し込み場所もあります。本社は工場が隣接しているため、すぐに1時間ほどの工場見学に向かうことができるのです。

 また、Audiの歴史的車両が飾られているミュージアムを見学したり、買い物をするといった楽しみ方もあります。納車式、工場見学、ミュージアムなどでゆっくりと時間を過ごした後に食事を楽しむことも可能です。同じグループのVolkswagen社にいたっては、納車センターの脇にクルマのテーマパーク「AutoSdat」をつくってしまったほどですから、Audi社の本社の施設はそこまで大規模ではありませんが、それでもクルマをより身近に感じられるような仕掛けがされているのです。

 日本ではクルマ離れが声高に叫ばれていますが、住宅の次に高い買い物と言われるクルマの購入時に、本社を訪れて自分のクルマがどのように造られているかを知ったり、その会社の歴史を知るといった特別な体験ができることを売り物にする方法もあるはずです。食や歴史を通してユーザーとの距離を縮める方法はぜひ日本メーカーにも見習ってほしいものです。