各種メディアで報じられているように、訪日外国人数が今年も大きく増加しています。日本政府観光局の統計データによれば、訪日外国人数は2016年1~5月の累計で約973万人。前年比で約29%も多い水準です。この勢いであれば6月には確実に累計1000万人を超え、通年でも前年比で大きく伸びて過去最高となるでしょう。中でも、訪日外国人数全体の約1/4を占める中国からの来訪者が前年比45%増(1~5月の累計)と拡大し、香港や台湾を含めた、いわゆる中華圏で見ると訪日外国人数の約半数に達します。

 中国からの訪日客の消費動向は“爆買い”と称されるように、日本で数多くの買い物を楽しむことが目立っていましたが、昨今は日本でしか味わえない体験型に移りつつあるといわれます。インバウンドツアーを企画する企業にとっては、いかに“日本ならでは体験”をツアーに盛り込むかが競いどころのようです。

 実は、日経テクノロジーオンラインの中国版「日経技術在線!」でも、2015年秋から体験型インバウンドツアーを企画・実施しています。直近では、2016年5月下旬に実施しました。日経技術在線!の読者を中心とするツアー参加者の行動を見ると、中国で日本がどのように見られているのか、何に期待されているのかを垣間見ることができます。

 我々が企画・実施したツアー名は「日本自動車工場視察団」。その名の通り、自動車に焦点を合わせ、自動車メーカーの工場視察と自動車技術の展示会「人とくるまのテクノロジー展」への参加で構成しました。日経技術在線!では日本メーカーの自動車に関する記事がよく読まれていることから、自動車を軸にインバウンドツアーを企画した次第です。

 ツアー参加者は30人。車載部品などを手掛けるメーカーの社員だけでなく、電気自動車ベンチャーの技術者、さらには学生など多様ですが、日本の自動車産業に興味のあることは共通しています。日本の社会や文化に関心がある“知日”と称される方々ですね。見学した自動車工場は、ホンダの狭山工場、富士重工業の矢島工場、日産自動車の横浜工場と追浜工場、そしてトヨタ自動車の元町工場。そこに東京・銀座にあるジェイテクトのショールームの見学、そして展示会の視察や商談も加わり、さらに最終日にはツアー期間中に見たことや気付いたことなどを皆で共有し合ってまとめる「ラップアップ」を開催しました。まさに自動車漬けの1週間でした。

「人とくるまのテクノロジー展」の会場に到着したツアー参加者
「人とくるまのテクノロジー展」の会場に到着したツアー参加者