サンスターによる「災害時の口腔ケア」に関する情報(出所:サンスター)
サンスターによる「災害時の口腔ケア」に関する情報(出所:サンスター)
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 初めに、この度の熊本地震で被災された皆さまに心よりお見舞いを申しあげます。

 1年ほど前になりますが、「ITヘルスケア学会 第9回年次学術大会&モバイルヘルスシンポジウム2015」の取材のため、熊本市に数日滞在しました。あの場所は今、どうなっているんだろう――。震災発生以来、そんな思いが頭をめぐっています。

 こうした大きな災害発生時、問題となるのが医療の供給体制です。医療機関そのものや電気・ガス・水道・通信網などのインフラが打撃を受けたとき、必要な医療の提供をどのように維持するか。各自治体でさまざまな取り組みが進められていますが、そのうちの1つが「遠隔医療」の活用です。

 例えば、東日本大震災で多くの医療機関が壊滅的な被害を受けた東北地方では、モバイル端末を活用した「避難所アセスメントツール」の活用基盤の構築が進んでいます(関連記事1)。衛星通信などを使い、避難所のインフラや衛生状況、食糧事情、避難者の健康状態などに関する情報を、モバイル端末で入力したり閲覧したりできるようにするものです。

スマホ健康相談で支援

 今回の熊本地震でも、遠隔医療にかかわるある取り組みが注目を集めました。オプティムとMRTが発表した「ポケットドクター for 震災支援版」です(関連記事2)。

 同サービスは、スマートフォンなどから利用できる遠隔診療・健康相談サービス「ポケットドクター」を、被災地で無償提供するというもの。震災支援のボランティアを希望する医師の協力を得て、熊本地震の被災者に対し、遠隔からの健康相談を無償で利用できるようにする取り組みです。

 厚生労働省が2015年夏、遠隔診療の適用範囲に関してより広い解釈を認める旨の通達を出してから、遠隔診療サービスが相次ぎ立ち上がっています。ポケットドクター for 震災支援版はそうした中、災害医療における遠隔診療の役割の一端を示すものと言えそうです。

いずれはドローンも

 災害時には、口腔ケアも大きな課題となってきます。歯をうまく磨けているかどうかを、センサーとスマートフォンで手軽に可視化できる“スマートハブラシ”を2016年4月に発売したサンスター(関連記事3)。同社は「災害時の口腔ケア」に関する情報を同社ホームページで発信中です(同社の関連サイト)。歯ブラシがなかったり、水が少なかったりする場合の口腔ケアに関するアドバイスなどを提供しています。

 今回の震災では、ドローンの活躍も目立ちました。被災地の空撮に、ドローンを活用した事例も多かったようです。2015年12月の改正航空法の施行を受け、さまざまな分野での活用が期待されるドローンですが、医療分野はその1つ。救急・災害医療や医薬品の配送にドローンを活用する試みが、各所で盛んになっています(関連記事4同5同6)。

 デジタルヘルスが、災害医療に果たす役割は今後ますます大きくなる――。ここではごく限られた事例しかご紹介できませんでしたが、各方面での取り組みからはそう予感させられます。

 日経デジタルヘルスは2016年6月12日、東京・秋葉原で遠隔診療に関するセミナー「遠隔診療は医療を変えるのか?~厚労省の“通達”から1年で見えてきたこと~」を開催します。ポケットドクター for 震災支援版の提供元、MRTにも登壇いただきますので、ぜひ足をお運びください。