各社が燃料改質エンジンに注目するのは、比較的安く燃費性能を大きく高められるため。日産は、単気筒エンジンを使った実験で熱効率を約6%と大幅に高める成果を発表しました。ホンダは独自路線で実用化に時間がかかりそうですが、20%以上と驚異的な向上幅を狙います。

 コストはそれほど高くありません。例えば日産が取り組む手法の場合、ガソリンエンジンで一般的なEGR(排ガス再循環)に改質器を加えるくらい。排ガスを吸気側に通す管(EGR路)の途中に、触媒と燃料噴射装置から構成する改質器を設置して実現します。

 改質用の触媒は、ガソリンエンジンで一般的な排ガスの後処理装置である三元触媒に似ています。主成分はロジウムで、三元触媒から白金とパラジウムを取り除いたもの。製法は三元触媒とほとんど同じです。排気量の違いや貴金属の価格次第ですが、排気量1~2Lのエンジンならば、触媒と燃料噴射装置を合わせて1万円以下のコストを目指せるでしょう。

 エンジンの熱効率を高める取り組みは、0.1%高める技術を地道に積み重ねている状況。一気に2%以上高められて1万円以下の追加コストならば、「費用対効果」に極めて優れた技術と言えます。しかも耐久性の課題を解決するメドも立ってきました。

 実のところ燃料改質技術の歴史は長く、最初の論文は1960年ごろのものとされます。これまで、コストと性能が見合わないとして何度も頓挫してきました。最近になって自動車エンジンでよく使われるようになってきたEGRと組み合わせるアイデアが登場。再び脚光を浴びています。今度こそ実用化にこぎ着けてほしいものです。