燃料改質エンジンの構成
燃料改質エンジンの構成
ガソリン燃料と排ガスを改質用触媒で反応させて水素をつくり、その水素を吸気側に入れて燃焼速度を高める。EGR路の途中に触媒と燃料噴射装置を設置する。図にはないが、実際にはEGR路の触媒のあとにEGRクーラーを搭載することになる。日産自動車の資料を基に作成した。
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 次世代の自動車エンジン技術として、注目が高まっているのが燃料改質です。日本の大手自動車メーカー各社が力を注ぎます。自動車エンジンの今後の進化を支える重要技術になる可能性を秘めます。

 詳細を、「日経Automotive」の4月号で紹介しました。燃料改質エンジンとは、自動車燃料を改質して別のものに変え、燃えやすくするもの。多くの手法がかねて提案されてきましたが、最近注目を浴びるのが燃料を水素に変えて、EGR(排ガス再循環)と組み合わせる手法です。これがなかなか秀逸なアイデア。排熱回収効果と相まって、ガソリンエンジンの熱効率を大きく高められる可能性があります。

 具体的には、ガソリン燃料と排ガスを触媒に通して水素に変えて、吸入空気に混ぜます。水素は燃焼速度が極めて速く、エンジン筒内での燃焼を速くできます。EGRで排ガスを多く気筒内に戻すと燃費は良くなるものの燃えにくくなりますが、それを防げるわけです。

 国内の大手自動車メーカーで特に熱心なのが日産自動車です。近年、研究成果を積極的に発表します。トヨタ自動車も、エンジンの熱効率50%達成を目指すロードマップで、燃料改質を重要技術と表明しました。ホンダは、主流の水素に変える手法と異なる方向で熱心です。マツダは公表しないものの、日経Automotiveに対して取り組んでいることを明かします。

 日本政府も、燃料改質技術の実用化を後押ししています。国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の「革新的燃焼技術」で、燃料改質を基盤技術の一つに位置付けました。早稲田大学教授の大聖泰弘氏が中心になって研究を進めています。