シャープ代表取締役社長の戴正呉氏
シャープ代表取締役社長の戴正呉氏
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 「1年で会社はここまで変わるものなのか」。2017年3月13日にシャープ本社(大阪・堺)で開催された同社の社長懇談会に参加して、このような感想を抱きました。この社長懇談会は、メディア関係者を対象に同社代表取締役社長である戴正呉氏が会社の現状や今後の方針を説明するために開催されました(関連記事:「業績急回復のシャープ戴社長、『人に寄り添うIoT企業へ』」)。戴氏は、台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕出身で、2016年8月13日にシャープの社長に就任しています。

 戴氏は社長就任以降、矢継ぎ早に構造改革を断行。その成果は既にハッキリとした数字になって表れています。営業利益は2016年度第2四半期から黒字化し、同年第3四半期からは当期純利益の黒字化を達成。さらに、2017年2月17日には2016年度の通期業績を上方修正し、2016年度の年間経常利益の黒字化を見込むまでに急回復させています。

 今から約1年前に当たる2016年4月2日に、私はちょうど大阪・堺の同じ会場で、歴史的とも言える記者会見に出席していました。Foxconnグループによるシャープへの総額3888億円の出資を軸とする戦略的提携の調印式が実施された場です(関連記事:「鴻海・シャープが共同会見、『日本で技術開発を加速させる』とGou氏」)。出席したのはFoxconnグループの会長兼CEOのTerry Gou(郭台銘)氏、当時のシャープ社長の高橋興三氏、そして現在のシャープ社長である戴氏です。戴氏は当時、Foxconnグループ副総裁として会見に参加していました。

 1年前のこの会見の雰囲気はとても物々しく、殺伐としていたのを覚えています。海外からの報道関係者も多数参加し、台湾のメディアは大騒ぎの状態。これに対して、当時の国内業界を覆う風潮は「ついに日本の大企業が台湾企業の軍門に下った」といった形で、どちらかと言えばネガティブな空気が支配していました。記者会見自体も、進め方などを含めて、イニシアティブを握っていたのはどちらかといえばFoxconn側との印象があります。郭台銘氏への質問も、「シャープの雇用は維持されるのか」といったリストラ絡みのものが多く、後に訪れるであろう容赦ないリストラを前提に質問していた報道陣も少なくなかったと思われます。